なに、アイツ。


イライラしながら、あたしはもう一度、公園のベンチに腰を下ろした。


そしてポケットからピッチを取り出そうとした。


「あれっ?ないっ!」


だよね……。


あれだけ雄也と乱闘して宙吊りにされりゃ、ピッチも落ちるはずだわ。


そう思って笑えた。


悲しいはずなのに、孤独を感じていたのに……、笑いが止まらなかった。



“……ん?あれ?”


さっきのムカつく男があたしのほうに近づいてくる。


「笑ったり泣いたり、忙しい女の子だなぁ」

「はっ?見てたの?」

「『見てたの?』もなんも、俺の家、この裏だからさぁ〜」

「そう……」


男はなにも言わず突然、ベンチに腰かけた。


「なにっ!?」

「こんな遅くにひとりじゃ危ねぇーよ」

「うるさいよ!関係ないじゃん!ってか、大丈夫だし」

「まぁ……、その顔じゃ男も声かけねぇけどな……」

「マジなんなの?ムカつくんだけど!」

「そんな怖い顔すんなよぉ〜、ほれ!」


男が袋を差し出した。


「なに?これ……」

「応急処置!」


中を覗くと絆創膏とマキロンが入っていた。


「えっ……?」


あたしが不思議そうにしていると、


「貸せよ!」


と言って、あたしから袋を取り上げた。


「えっ……」

「ほら、顔!こっち向いて」


あたしは言われるがままに男の方を向いた。


顔が近すぎて、とっさに目を反らした……。


「ププッ。いま緊張した?大丈夫だよ、なんもしねぇから」


コイツ、本当にムカつく!からかわれている気がして、あたしはふてくされた。