蝉の鳴き声が響く。この田舎に引越して来てから3ヶ月が経った。季節はすっかり夏。


今日は終業式で、明日からは夏休み。授業がないから身軽で嬉しい。


「いってきまーすっ」


いつも通り家を出て、家の前で待っている人影に近付く。


「お、はっ」

「はよー」


京の笑顔がそこにあった。


あの日、初めてふたりでサボった日から学校へ一緒に通うようになった。何の約束もしてないけど、自然な出来事だった。



「あー! 明日から夏休みっ。ちょーっ楽しみっ!!」

「遊ぶ計画いっぱい立てちょったもんなぁ」


当たり前じゃんっ! 計画立てなきゃ京に会えるか分かんないんだもん!!


「……天気いーなー」


不意に京が青空を見上げる。


言葉にしなくても、もう綾には京の言いたいことが分かるようになっていた。


「今日は通知表あるよ?」

「んー……遅れて行けばいいが!!」


ニカっといたずらっぽくに笑う京。


笑顔は反則だってば……。



綾たちは学校ではなく、秘密基地へと走りだした。