「……や……綾っ!」

「……?」


ゆっくり目を開けると、パパが綾の顔を覗いていた。


「やっと起きた……。着いたよ? 業者さんも帰ったし」


気がつけばもう辺りは夜で、眠い目を擦りながら起き上がる。


か…体が痛い…! ずっと変な態勢で寝てたんだろうな……。


「新しいおうち、どこ?」


車から降りて、まだ暗闇に目が慣れないままパパを見上げれば「そこだよ」と、パパが指差した。


その先に目を凝らすと、見えてくる新しい家。


「えっ! でかっ!」


闇夜に目が慣れた綾は、以前の家の2倍はあるだろうその家に驚きと歓喜の声をあげた。


「え……高くなかったの?」


しばらく新しい家を見上げていたら、自然とその言葉が出た。


「ん? 安かったよ? 田舎だからね。土地が安いんだよ」

「安い……これが?」


たしかに周りは思ってたより田舎かも……。ていうか、森しか……ない?


そんなことを考えてるとパパの手が背中を叩いた。


「さ。中に入ろうか」


戸惑いながらも頷き、小走りに新しい家の中へと向かった。