まだ十六にしかならない紀子であったが、ドレスで着飾り、髪の毛をアップにすると、見違える位になった。

 元々、大人っぽい所が人一倍あった彼女であったが、それなりの格好をすると、より際立って見える。

 普通の大人の色っぽさとは異質なものが漂っていた。

 小悪魔的とも違うもの……

 少女でありながら女の部分を演じるという、いわば禁断の魅力とも言うべき香りを振り撒いていたのである。

 本人自身はそれを意識してる訳では無かったから、寧ろわざとらしいいやらしさが感じ取れなかった。

 客受けが好いだけでなく、店の従業員総てに好かれた。

 自分の美しさとかを一切鼻にかけない姿に、誰しもが好感を持つのは当たり前と言えよう。

 三ヶ月目に店のトップに踊り出ると、以降、ただの一度として他のホステス達にその座を譲り渡す事は無かった。

 普通、こんな小娘風情にトップを取られたりすると、大概は古参のホステス達のいびりや嫌がらせに遭うものだ。

それが一切無かった。

 あれだけ中学時代は他人からのイジメを受けていたのにも関わらずである。

 寧ろ古参のホステス達からは好かれた。

 中でも凛子というホステスは、まだ紀子が右も左も判らないうちから親切に何かと目を掛けてくれていたのである。