しばらくして敦子が森先輩を連れて喫茶店に帰ってきた。

外では雨が降り始めていて、湿った香りがした。

「おまたせ。先輩来てくれたよ」

山岡が頭を下げて、森先輩を迎えた。

敦子は森先輩を山岡の隣に座らせ、でかい尻で俺を奥へ押しのけて隣に座った。

「こいつが私のイトコの潤、で、この子が潤のクラスメイトの山岡千恵ちゃんです」

森先輩に軽く頭を下げる。

学校帰り、敦子を迎えに行くときに、何度か見た記憶がある。

「こんばんは、森真由美です」

部長だけあって、通る声に、大人の印象があった。

一重の目がひどく可愛らしい。

「ちょっと潤、なにじっと見てるのよ」

「……見てない」

「見たいんだよね、私のケータイ」

森先輩は俺をフォローするように言って、ポケットからケータイを取り出した。

そこには死の待ち受けが表示されていた。

走り書きされた血文字は"2"

待ち受けの画像はまた薄暗く、ブレていたが人が写っていた。

「この数字はね、1日ごとに減っていくの。昨日は3だったわ」

俺は山岡と視線を交差させて頷いた。

「本気になんてしてなかったの。充が、自分で持ってた画像をいたずらで私にもコピーしたのかって思ってた」

森先輩の彼氏で、ムーントピックで死んだ、弓道部のエース甘川充だな。

「ね、この写真、マジ怖い……」

敦子は森先輩のケータイを見て呟いた。

それもそうだろう。

山岡の待ち受けは人が写ってないからいいけど

これは、顔だし……

森先輩の待ち受けに写っているのは女だ。

よく写真で自分撮りしようとして、顔だけでっかく映った奴に似てる。