ーーー・・・黒薔薇秀美学院。


その中でも4人しか入れない、VIP室ー・・・。


美土里誠名 side


タンッ……、タンッ


一定のリズムを刻みながら、ダーツの矢が刺さる。


よくもまあ、そんなに飽きずにできる蓮華を見て、携帯をいじる。


零涙と由弦は、チェスの真っ最中。


その中で、1人ダーツに熱中する蓮華。



「それ、そんなにおもしろいー?」


「暇潰しに、しては………なっ。」



零涙の、質問に応えつつ、蓮華は最後の矢を放った。


〜〜♪♪♪


軽快な音楽が、鳴り響いてダーツの的が光る。


この音は、最高得点を出した音だ。


蓮華は、満足そうにダーツの的を見つめる。



「うわ、また60? キモいって〜」



冷やかしながら、そう言うと返ってきたのは、満足そうな蓮華の声。



「まあ、この俺だからな」


「真面目に、質問していい?」


「いいぞ」


「蓮華って、何様?」



その言葉を投げかけるも、返ってきたのはと言うと。


予想通り。



「えーと…………俺様?」



一瞬、周りが静まり返る。


その数秒後に、3人が、吹き出した。


やっぱり、蓮華は変わらないなあw


予想通りというか、期待以上というかww


まあ、それも蓮華の魅力なんだけど。



「うわ、まじで言った人始めてみたーww」



「……………ゴホン」



当の本人は、俺らが笑いだした理由に気付かず。


不思議そうに、首を傾げる。


そんな蓮華の前に、零涙が立つ。


お、珍しい…



「蓮華ってさ、あの花之家財閥の子息だとは思えないほど、“バカ”だよね」


「まあな!」



まあなってww


さすが、蓮華だな。


零涙のトゲのある言葉を受けても、自信満々だ。


ある意味、単純なんだけどねw


零涙は、すぐさま蓮華から離れて俺の横に座る。


さすがに、ひいてる。


そんな蓮華を、見て、また笑いが吹き出てきたところで。


後ろから、由弦の声が聞こえた。



「ところで、蓮華。俺たちをなぜここに呼んだ?」



その由弦の言葉を聞いて、そういえば……と、思い起こす。


蓮華は、校舎に戻る途中



【作戦会議するから、VIP室集合な。】



と、意味のわからない発言をしていて。


ま、いつもよく分かんないけど。


だけど、そう言った蓮華の顔は、見たこともないような。


楽しそうな顔だった。


一体、作戦会議とは、何なのだろうかー・・・。



「あいつらに、ついて」



ビリヤード台の上に腰掛け、腕を組む蓮華。


あいつら………?


あぁ、あの4人のことか。


零涙は、理解出来ないらしく俺を見つめる。


いや、助け求められても…………



「ほら、あの4人だよ。涼香ちゃんと、香月ちゃんと、姫ちゃんと、恋愛ちゃん♪♪」



「あぁ、あのうざいヤツら」



「てか、誠名。よく名前覚えてるな。」



蓮華が、感心するように俺をみる。


当たり前。


女の子の名前はおぼえて、当然。


まあ、こんなこと言うからチャラ男に見られてるのかな?


でも、事実女の子は好きだから仕方ない。



「で、そいつらがどうしたって?」



明らかに不機嫌そうな、零涙の声。


女嫌いな零涙にとって、この時間は嫌だろう。


話し合いにも、参加したくないはずだ。


蓮華は、「それがな」と言うと天を仰いだ。


ん……? このポーズは?


何か、嫌な予感しかしないんですけど。



「あいつらさー」


「うんうん」


「全員ー」


「うんうん」


「絶対、俺のこと好きじゃね?」


「うんうん…………って、はぁあッ!?」




3人の声がぴったりと、ハモる。


危ない危ない。


危うく、うんって言ってしまうところだった。


確かに、蓮華は、カッコイイけど。


あの4人には、好かれていない。



「え?」


「だって、蓮華だよー?ぷっw ないないww」


「グサッ」



蓮華が、ダメージを受ける。



「ほんと、ナルシも大概にしてよ」


「グサッ!」



蓮華が、さらにダメージを受ける。



「正直言うが、気持ちが悪い」


「グサァッ!!」



蓮華が、さらにさらにダメージを受ける。


その直後、言葉のダメージを受け、蓮華が倒れる。



「あ、死んじゃった。」



零涙が、蓮華の頬を人差し指でつつく。


手がピクッと動き、蓮華が起き上がる。


まるで、どこかの医療ドラマのようだ。



「俺は、死んでないぞ」


「はいはい。蓮華多分、頭ケガしちゃったのかな?」



起き上がった蓮華の、頭を触りながら答えた。


蓮華は、「してねえよ!!」と、俺の腕を振り払う。


尚も、蓮華は譲らず俺がモテルと言い出すので。


終止符を打つように、由弦が一言。



「というか、あいつらはお前を嫌っているぞ?」



あ、言っちゃった。


さて、蓮華の反応はどうかな?


蓮華を見ると、目を見開いたまま。


呆然。



「―――――――――・・・・・・まじ?」



「うんうん」



「ええええええ!?」



「いや、逆にえぇ!? 何でそんな自信満々!?」



俺がツッコミを入れると。


蓮華は、髪を触りながら。


自身気に、唇を尖らせた。



「いやだって……俺、イケメンじゃん?」



「…………………おぇ。」



「何だよその、反応は!!」



そんな蓮華を、一番ひいた目で見てるのは零涙。


零涙は、3mぐらい蓮華から離れて。


ただただ、ひいていた。



「真面目にキモいよ、蓮華」


「え?俺って…カッコよくないの?」


「うーん……、なんて言うか……、残念?」


「それ一番やな奴!!」



何だろ…。


確かに、蓮華、容姿は文句無しなんだけど……



「単純に、蓮華ってさ…」


「バカ…「わあー!!!」なんだ、誠名。いきなり。」



俺は、慌てて由弦の言葉を遮る。


そんなことを言われたら、蓮華は毎回“あの”状態なる。


だから、なんとしてでも阻止。


不服そうな由弦の、肩を組んで小さな声で話す。



『なんだ、さっきの』


『ゆづゆづってば、本当のこと言うなって!!』


『?だか、本当の事を言わなければあいつは』


「だぁーから!言ったら、傷つくでしょ!?蓮華がバカなんて言ったら!」



「誠名、声……大きくなってる」



零涙の、言葉に青ざめる。


おそるおそる、蓮華の方を振り向くと。


目が。



死んでいた。



「お前ら…」


「いやあー、何かね?今のはちょっとした冗談っていうかさー、あはははは!!」


「俺のこと、そんなふうに……」



じりじりと、近寄ってくる蓮華に恐怖を感じる。



「落ち着こ!?アメリカンジョーク!!ジョークだって!!」


「いや、お前が落ち着け」



零涙の落ち着いた声が聞こえるが、それどころではない。


壁際に、おいこまれ絶対絶命。


蓮華の、拳が振り下ろされる。



「っ………!!」



「お前らなんか、大っ嫌いだああああ(涙)」



「あーあ。また、始まった」



零涙が、ため息をついてソファーに腰掛ける。


そう、蓮華は、ナルシスト。


だが、意外とメンタルが弱い。


女の子にふられて、泣いたり。


俺らがいいすぎて、泣いたり。


とにかく、メンタルが、硝子並に弱い。


こうやって、毎回俺らは面倒を被る。


蓮華は、甘やかされて育ってきたため仕方が無いことだが。


しかし、高1にもなって男泣きは、流石に……



「イタすぎる、」



「うわあああ(涙)」



「あーもう!うるさいっ。」



そう言って耳を塞ぐ零涙。


全く、大財閥の御曹司がこうだとは、公にはできないな。


由弦は、蓮華の背中を撫でながら介護。


毎年恒例の、災厄(?)イベント。



「とりあえず、ココアと飴玉持ってきて、あと鏡」


「分かった。」


「どうせ、俺は、弱虫ですよ!!(涙)」



VIP室一体に、蓮華の声が響き渡った。