「さっきのイケメン君、かなり惜しかったよねー!」


「ほんとほんと!王子様みたいでカッコよかったのに、耳が聞こえないなんて」


「ねー、ありえない。顔はもろタイプだったのにー!耳が聞こえないなんて、恥ずかしくて連れて歩けないよ」



ん?


まさか、そんなはずはない。


きっと、違うよね。


自分にそう言い聞かせて、クレープを頬張る。


れおはすでにコーヒーを飲み終えて、スマホをいじっていた。



「幼なじみの女、イケメン君のことが好きなのかな?」


「えー、それはないんじゃない?だって、聞こえないんだよ?一緒にいて会話が出来ないとか、ありえないって」


「だよね。手話で話したりしてるのかな?」


「ぷふっ、手話って。大変そう」



どこか聞き覚えのある声と、会話の内容が気になって聞き耳を立てた。


声は私のすぐ後ろのテーブルから聞こえて来る。


まさか、さっきのギャルたち?


恐る恐る振り返って後ろの様子をうかがうと、予想通りそこにはさっきのギャル2人組が、ハンバーガーにかじりついていた。



「ほーんと、あれだけカッコいいのにもったいないよね。かわいそう」


「あたしの彼氏、耳が聞こえないんだー!なんて言ったら、絶対みんなにドン引きされそう」


「さっきのサエのドン引きっぷりも、かなりすごかったけどね」


「えー、だってさぁ!普通引くでしょ、あんなこと言われたら」


「まぁね」



ギャル2人は、楽しそうに笑ってキャッキャっとはしゃいでいる。


だんだんイライラして、いつの間にか拳を固く握り締めていた。


何も知らないくせに……。


れおのことを、何も知らないくせに。


ドン引き?


ふざけるな。


握り締めた拳が怒りで震える。


耳が聞こえないからって、不幸だって決め付けないで。


かわいそうだって同情なんかしてもらう義理もない。


何より……人一倍優しい私の好きな人を、けなさないで。


何も知らない赤の他人に、れおのことをあれこれ語ってほしくない。