SIDE 坂木 弥生

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辺りも薄暗くなった頃。
狭い神社のキャパを越えた人ごみに流されながら、出店を目指して歩く。



「予想してたけどカップルばっかりだね」


「まぁ、そうだろうな」


「ヤヨも3年付き合った元カノちゃんと来てた?」


「来てた」


「へぇー。ラブラブ」


にこにこ笑いやがる。


本当にこいつは俺のことなんかなんとも思ってないから。


嫉妬するわけもないし。


今だってフリー同士の"デート"なんて言いつつ、特別な意味なんか微塵もない。


仲がいいやつなら男だろうと女だろうと、誰でもいいから祭りに来たはずだ。