気まずかった。
すぐに篠塚に置いて逃げたことを詫びようと思ったのに、年が明けても出来ずにいた。
何度も篠塚からのメールや着信があったが、返信する勇気も電話に出る勇気も持てずにいた。
情けない。
置いてけぼりにされた篠塚が、一人で水無瀬たち剣道部員の嘲笑を受けていたのかと思うと、いたたまれなくなる。
篠塚に嫌われた。
そのことを確認したくなくて、俺はまた逃げている。
おかげで、冬休みの間中もんもんとし続けるはめになった。
友達と遊んでいても、弟たちの相手をしていても、篠塚の顔がちらついてしまう。
もうこれは恋なんじゃないかというぐらい、篠塚のことが気になった仕方がない。
青山のことも。
母親とも。
溜め息をつきながら、リビングのテーブルで携帯電話をいじる。
母親は買い物に、弟たちは遊びに出てしまっている。
今日は友達との約束もなく、一人でお留守番だ。
携帯電話には友達や家族からのメールや通話履歴を埋めるように、篠塚からのメールと不在着信がずらずらと並んでる。
女の子らしくない電報のような簡素なメールには、怒ってないから連絡しろやらむしろ連絡しない方が怒るよなどと書かれている。
今日で冬休みは終わり、明日はいよいよ始業式だ。
嫌でも顔を合わせることになるのを思うと、気が重くて仕方がない。
もう逃げられない。
逃げてはいけない。
いいかげん、ちゃんと謝ろう。