風邪をひいたのが嘘だったかのように、あたしは元気になった。


陽の言葉を想い出すと、胸がキュンとなる

あの笑顔を想い出すと、あたたかくなる


もう……

嬉しいやら、なんやらでよくわからない……。





「絢」


「陽っ」


「朝から顔あけぇよ」


「……誰のせいだか…」

「俺?」





下駄箱で陽に会う

……周りの景色がキラキラして見える…。


陽が魔法をかけたみたい




「陽! おはよう」


「今日、渋谷でイベントがあるんだけどいかない?」





登校すればすぐに陽に声をかける女の子たち。

当たり前のように、
陽の腕に絡みつく……。

陽が人気者なのがつらいな……。





「あのさ、イベントとか行けないから」


「え?」


「つーことで……」




そう言って陽は、組まれている腕を乱暴に振りほどき、ゴミ箱の近くに…

なにする気……なの?


いつになく陽が他の女の子たちに冷たい

顔には冷ややかな笑みを浮かべている。




「ちょっと! 陽!」


「お前らから渡されたケータイなんていらねぇし……」




ケータイをゴミ箱に捨てて、また冷たく笑っている。

そして、ストラップを付け替えた新しいケータイをを見せている。



あの水色のクマのストラップのついた、新しいケータイ…。





「俺、つながる番号は本当に大切な人だけにつながればいい」





そう言ったのと同時に、あたしの携帯が震えた。


【新しい番号とメアド。登録しとけよ】



新しいアドレスから連絡先が送られてきた。





「陽、ケータイ……」


「これだけあればいいだろ?」




優しく笑うと、クマのついたケータイをカバンにしまった。


あの笑顔、やっぱり反則……。
あたしの好きな陽の笑顔は、太陽みたいに優しい笑顔。

無邪気に子供っぽく笑っている。


手を振る陽の笑顔は、いたずらに微笑んでいた。