駅の改札口前に立っていると、臙脂のダッフルコートに身を包んだ舞が駆け寄ってくる。


「ごめん、愛ちゃん。待った?」

「ううん。私も今きたとこ」


 十分遅れてやってきた舞に、私は首を横に振った。

 本当は家にいても落ち着かないからと待ち合わせの時間より三十分も早く来ていたんだけど。


「そっか、よかった」


 安心して、寒さで少し赤くなった頬で笑う舞に、四十分待った疲れも吹っ飛んだ。


「どこか行きたい所あるの?」

「ううん。とにかく、愛ちゃんと遊びたかっただけー」


 その言葉に、券売機に投入するはずだった小銭が地面を転がった。


「はわわ、大丈夫?」

「っと……大丈夫」


 体が熱くなるのを感じながら、私は転がる小銭を踏んで止めると拾い上げる。

 どうしてこうも舞は私の気持ちを掴むのが上手いんだろう。

 ……好きだなぁ。


「行きたい所がないなら、いつものところでいいかな?」

「うん!」


 頷く舞に、いつものショッピング街へ行くことになった。