昨日やった応援団員の採寸を思い出す。

チア部は練習がある日で手伝いを頼めなくて、ひとりで十人分の採寸をしなくてはいけなかった。教室に十人の男の子とわたしだけになってしまって、わたしは焦りと緊張でいつも以上にこわばった気持ちになっていた。

最初の採寸は団長の颯太くんだった。

「お願いしまーす」

颯太くんはふざけた感じでそう言ったけど、余裕のないわたしは小さくうなずくのが精一杯だった。
まず背中に回って肩幅、首から腰まで、そして腕の長さを測る。百八十センチ近くある颯太くんの肩幅をはかるときには、思いっきりつま先だちした。それに気づいた颯太くんが膝を曲げてくれたけど、そうすると体が曲がってしまって性格な数字が測れない気がした。

「普通にしてて」

わたしがそういうと、「ごめんごめん」と今度は直立不動になる。

せっかく気を使ってくれたのに、悪かったなとは思うけど、うまいフォローも思いつかなくて、結局無言のまま測り続けてしまった。

腕を横に広げてもらって胸囲を測るとき、わたしは少しためらった。メジャーを身体に巻くとき、どうしても身体が接近してしまって、後ろから抱きつくような体勢になってしまう。

でも、これは衣装係の仕事。別に誰もへんな風に思わない。

意識しすぎちゃダメ、変に恥ずかしがる方がおかしい。

わたしは自分にそう言い聞かせて、覚悟をきめると、颯太くんの身体に手を回し、すばやくメジャーを巻き付けた。数字を記録して、次はウエスト。ますます恥ずかしくなって、わたしはささっと仕事を終えた。