「舞ってね、五年生の時に転校してきたの」

 「へえ、篠塚と三笠って小学校も同じだったんだ」と稲葉が相槌を打って、私は舞との思い出を頭の中で再生する。


「私、その頃は友達が全然いなかったの。イジメられてたとかじゃないんだけど、少しクラスから浮いちゃってたから。人と合わせるのもあんまり得意じゃなくって、つまらないことで笑ったり、顔文字とか絵文字とかで装飾したメールを打つのも苦手だったし、人の陰口で盛り上がったりとかもね」


 楽しそうに陰口を叩くクラスメイトたちを私は軽蔑していた。

 でも、だからといって面と向かって何かを言えるわけでもなく、陰で見下していた。

 今思えば見下して優越感に浸っていただけで、意気地がない上に根性がひん曲がっている。

 でも、そんな私の前に舞は現れた。


「お父さんの転勤が多くて、舞もたくさん転校してきたんだって。友達つくるのって、結構大変でしょ? 特に、もう出来上がっちゃってる女の子のグループに入るのは。だから、私がいてくれてよかったって。友達になれたのが私ででよかったって。そう……言ってくれたの」


 仲良くなってから打ち明けてくれた内緒話。

 私たち、親友だよね。

 そう言ってくれたのが嬉しくて、切なかった。


「中学に入ってから友達も増えたけど、それでもやっぱり舞は特別なの」


 舞にとって私は友達かもしれないけれど、私は舞を友達以上にしか見れなかった。