気持ち悪い。

 女の子が女の子に恋をすることが、気持ち悪い?

 篠塚は確かに自分でそう言い、その言葉に涙を流していた。

 その涙は、あまりにも身に覚えのある涙だった。


「篠塚。お願いだから、そんなこと言うなよ……気持ち悪いだなんて、そんな」


 奥歯を噛み締めて涙を堪え、篠塚の腕を両手で掴む。

 情けないことに、俺の両腕は弱々しく震えていた。

 俺も泣いてしまいたい。

 清く白い羊の群れの中、自分を黒く穢れた羊だと思う。

 汚点だった。

 異端であることは罪なのか?

 そんな感情を抱いてしまう自分を嫌悪する。

 何も悪いことなんてないじゃないか!

 そう理性が叫ぶけれど、それでもこの感情は簡単に消えはしない。

 体に白い粉をまぶして白い普通の羊のふりをしなければならないことを知っているから。

 だって、そうしないと追い立てて群れから追い出すんだろう?


「お願いだから、言ってくれよ……三笠のことが好きだって」


 この感情は、一人で抱えるには重すぎる。

 誰かに全てを打ち明けたい。

 打ち明けても決して自分を拒絶しないであろう人に、ようやく俺は出会えたはずなんだ。


「……青山、透……」


 篠塚が口にしたその名前に驚き、飛び退く。

 みるみる間に全身から血の気が引いていく。

 なんで、篠塚はその名前を今ここで出してくるんだろう。

 俺の、好きな人の名前。

 なんで、わかった?