爆音。


耳をつんざくように、乱暴なくらい大音量の音楽。



フロアで踊る人たちとは少し離れたこの壁際の席が、最近のあたしの定位置だ。



「珍しいじゃん。さくらちゃんがひとりで来るなんて」



ビールを片手にしたリョウさんは、そう言って当然のようにあたしの隣に座った。



ここは、リョウさんと初めて会ったあのクラブ。


ミカと来ることがほとんどだったけど、今日は何となくひとりで来たかった。



「何かあったの? 彼氏とケンカとか?」



軽い口調でリョウさんが言う。


あたしは視線も合わさずに答えた。



「別に何もないよ。ひとりでリョウさんに会いに来ちゃ、変?」


「いや、嬉しい」



リョウさんのヒゲが、あたしの鼻先に触れる。



深いキス。


人目も気にせず、舌をからめ合う。



彼の、こういう手っ取り早いところが好きだ。


何のためらいもなくあたしを求めるところ。