再び高速道路へ。

 中国自動車道は高速とは言え、中国山地の中腹を縦断している為、アップダウンとカーブが多い。

 そこを普段はスピードを出さない連中も死に物狂いで飛ばすのだ。

 当然至るところで車は渋滞し、その先には目を背けたくなるような車の残骸と死傷者の姿があった。

(くそ、またやったか)

 車のブレーキが次々と灯り、たちまち車の列が出来上がった。車の動きに注意しながら脇をすり抜けて前方へ抜けると、下りの右カーブでケツを滑らせたのだろう、黒いスポーツカーが路壁に原型をとどめないほどの姿で張り付いていた。

 散らばった部品を避けながら通り過ぎる。

 さきほどからこの繰り返しだ。再び速度をあげると、杉や桧に囲まれた景色の中に鮮やかな彩りを添えている一角があるのが目に見えた。

(桜……もう咲いているのか?)

 一足早く咲いた桜。まるで残された時間を知っているかのように咲き誇り、俺の目を捉えて離さない。

(亜紀、覚えているか? あの桜を……)