「マキ」

 亜紀は俺に向かってそう言った。

「真樹夫だからマキでいいでしょ?」

「なんか女っぽくない?」

 付き合い始めてすぐ、亜紀は俺のことをそう呼ぶことに決めた。

「じゃああたしは何て呼んでくれるの?」

「え? 亜紀さん」

「ええー、そんなんやだよ。他人じゃない」

 亜紀は二歳年上だった。そうでなくても、時折見せる芯の強さが凛とした様子が大人びて見え、こっちは少しばかり萎縮してしまうところがあった。

 しかしそこに惹かれたのも事実だ。あれから猛アタックの末にようやく付き合うことになったのだから。