クラスへ帰ると、事故の話でもちきりだった。

中心には河田がいて、目撃談を飾り付けながら話していた。

立幸館とは交流が多いし、死んだ渋谷景の事を知っている奴もいるだろう。

そうだ、池谷美保のことを河田から聞いていない。

甘川充たちとムーントピックで死んでいた立幸館の池谷美保。

池谷美保も……

大切な人から待ち受けがやってきたんだろうか……

「おらー席つけー」

ガラ、とドアが開いて、黒い出席名簿を振り回しながら担任が教卓の前に立った。

「はー、今日は朝、大変だったな」

「ねーセンセー自分から飛び込んだんでしょー!?」

「立幸館の人だって名前は!?」

声が上がると、担任は指揮者のように手を広げて場を押さえた。

「それより、もっと大切な話がある」

サワッとクラスがざわめく。

俺はボンヤリと外を見たまま、声だけを聞いていた。




「長谷川沙織が、昨日亡くなった」




クラスが大きくざわめいた。

一気に空になっている長谷川の席に視線が集まり、山岸絵里子に続いて、と騒ぎ始める。

「立て続きの不幸だ……試験前でみんなも大変な時だとは思うが、長谷川の葬式に行ける奴は、行ってやってくれ。日曜日に長谷川の家で執り行われる。先生も行くから、一緒に行こう」

あの、重苦しい空気を思い出す。

頭が真っ白になって、何もできなかった。

照明にぶらさがるようにして、首をつっていた長谷川沙織。


もう……遠い日のことのようにも感じた。