新しい週が又始まった。

 前日迄の熱っぽさは消え、新たな期待を抱きながら初日の照明を迎える。

 が、姿月とのひと時みたいな感覚は沸き起こらなかった。

 平凡な日々が続く。

 たまたまテレビの深夜番組に姿月が出ていた。

 楽屋風景を映し出した画面に、彼女の屈託のない笑顔が広がっていた。

 翌日、僕は彼女が出演している劇場宛てに手紙を書いた。

 半分は衝動的行動だった。

 彼女と共有出来た十日間の余熱が、余りにも高かったのだろう。

 便箋五枚程につらつらと書いた文面を、今となっては思い出す事も出来ないが、ある一文だけははっきりと今でも覚えている。


『……良き照明マンを育てるのは、良き舞台を演じてくれる踊り子さんです。
ありきたりな舞台の照明を何百回と経験するよりも、素晴らしい舞台を演じてくれる踊り子さんの照明を一回やる事の方が、どれだけ成長の糧となる事か……
 本当にありがとうございました』


 そぐわない程に青臭い言葉を書いた手紙を僕は出した。


 それから一週間程経ったある日、小さな小包が届いた。

 差出人の名前に覚えは無い。

 住所を見ると大阪になっていた。

 直ぐに包みを開けると、中から一本のビデオと手紙が入っていた。

 姿月からだった。

 手紙と共に入っていたのは、楽日の最終回に録ったビデオだった。

 確か、半分冗談でダビングして貰えないかとは言った気がする。

 彼女はその事を覚えていて、約束を守ってくれたのだ。

 手紙には、十日間のお礼が書かれてあった。

 僕にとっては面映ゆい言葉が書き並べられていた。

 すっきりした端正な字で書かれた手紙を僕は何度も読み返した。

 まるで、大切な恋人からのラブレターを手にするように……

 僕は間違い無く彼女に恋をしていた。

 ストリッパー姿月に……

 だが、この感情は普通の恋愛感情とは違っていた。

 尤も、そう自分で理解出来る迄はもう少し時間が掛かるのだが。