朝が苦手だと最初に気づいたのは、いつだっただろう。
 物心ついた頃には、お母さんに「がんばって、急いで」と追い立てられ、手を引かれていた。
 低体温で低血圧だったわたしは、何をするにも時間がかかった。特に朝は頭がぼーっとして、支度に手間取る。食事をとるスピードも人一倍遅かった。
 小学校生活が半ばに差しかかる頃には、自分が班のお荷物であると自覚していた。てきぱきと動けないわたしを、同じ経路で登下校する班員の子たちが迷惑がっていた。
早く学校に着けばその分、遊べる。給食を食べ終われば、校庭や体育館へ。早く家に帰ったら明るいうちにまた外へ……そんな風に次々と進む周りのペースに、全くついていけない。
 未波ちゃんのせいで――。
 待ってください、矢淵さんがまだです――。
 先生、また矢淵さんが遅れました――。
 みんなの足を引っ張ってしまう自分。
 みんなのように動けない自分。
 わたしは口をつぐみ、うつむきながら、申し訳なく思っていた。
 周りの時間は先へ先へと流れているのに、わたしの時間だけ停滞しているような気がした。
 人間社会だから助けられてどうにか生きているけれど、野生動物だったらとっくに死んでいるなあと思うこともしばしばだった。

 体育の時間が苦痛だった。ほとんどの種目が拷問だった。
 縄跳びではすぐに息が切れ、一分も跳び続けられなかった。
 ドッジボールでは最初から的になって狙われた。球を当てられ、外野に移動しても、チームに貢献できたためしはなかった。
 千メートル走では、ゴールにたどり着く前に倒れた。
 苦しむわたしを、男子がからかう。野蛮な男子が憎かった。
 小学校生活の残りは、ほとんど登校できなかった。