アラームが鳴っている。
 もう朝が来たなんて信じられない。
 さっき布団に入ったばかりの気がするのに。
 ああ、そうか。昨晩は飲み会だったんだ。
 ずいぶん飲んだ。途中までは楽しく、終盤はやけになってコップをあおった。
 だって大切なバンド「トライクロマティック」が解散するって言うから――。
 遥人は先に帰ってしまい、残ったのは亜依だけ。最後まで航は現れなかった。
 どうにか考え直してほしくて、しつこく亜依に絡んだ。

 そこから後の記憶があやしい。
 店を出たのは何となく覚えている。
 亜依の腕に支えられて、歩いた。
 送ってくれると言われて……どうしたんだっけ?

 二日酔いの頭痛に襲われるのを覚悟して、わたしは額に手をやった。
 意外にも、痛みはない。
 ただ、だるいだけ。
 もともと朝は苦手だし。やけに暑いし。
 あれ? 暑いっておかしいな。エアコン直ったんだっけ……。
 うまく頭が働かない。とにかく暑いし、アラームはうるさい。
 片手を動かす。
 どこから音が鳴っているのか、目を閉じたまま探る。
 右……? それとも、もっと上?
 なかなか見つからない。
 頭上に手をやって何度か左右に動かすと、指先が携帯の硬い手触りをとらえた。
 寝起きのぼんやりした頭を動かして、わたしは携帯を確認する。