最初に言っておくなら、この記録は僕の妻のために残す。

ここに書いておくことは、幾分物語的で、まるで僕の処女小説みたいなものなので、本当はとても恥ずかしいのだけれど、僕は書ききらなければならないと思っている。

だから、この手記を見つけたのが妻以外――――そうだなぁ、亘や亨、つむぎだった場合、これ以上先を読まずにお母さんにそっと渡してほしい。
お父さん、あまり格好良くないんだ、この中では。

そして僕の大事な奥さん、きみが見つけてくれたなら、どうかじっくり読んでほしい。
ここにはきみが知らない、いや、忘れてしまったことがたくさん書かれている。

気乗りしないかもしれないね。
僕もお義母さんも、きみにあれこれ話をするのは慎んできたから。

でも、どうか怖がらずに、不安がらずに読んでほしい。脚色や美化はしてないつもりだ。