「白雪、いつまで寝てるの?」



パチリと目を開く。


ぼやけた風景。


そこにいたのは、素敵な素敵な王子様ではなくて……。



「……お母さん、か」


「何あんた、お母さんじゃ不都合なわけ?」


「め、滅相もございません」


「はぁ。もういいからさっさと起きなさい。早くしないと、引っ越し屋さん来ちゃうわよ」


「あっ! そうだった」



“引越し屋さん”



その言葉は、寝起きで鈍った脳を一瞬にして目覚めさせた。


私──浅原白雪(あさはら さゆき)は、この春晴れて高校生になる。


そして……そんな私は今日、この家を出て行く。


明日から始まる高校生活に向けて……。


というのも、そもそもこの家から学校までは結構距離が遠くて、通学するのにだいぶ時間がかかってしまうという問題があった。


そこで、丁度学校のすぐ近くにあったおじいちゃん家に、私は3年間身を寄せることになったのだった。


お母さんとお父さんと離れるのはやっぱりまだ寂しいけど。でも大丈夫。


だって、大好きなおじいちゃんと一緒なんだもん。