「危ないっ!!!」

思わず、そう叫んだ。

と同時に女性の腕を反射的に掴んでいた。

とても華奢。

やはり女だったみたいだ。

視覚的に、正確に掴むのは不可能に近い筈なのだが無我で出した手は、どうやら上手い具合に捕らえたようだ。

見も知らぬ人間にいきなり叫ばれ、掴まれたのだ。

女性が大きく驚愕する反応が伝わった。



プァアン…



警笛と共にすり抜け、風のように列車は過ぎ去った。

その間の無言の後、彼女は口を開いた。

「……いきなり、何なの?貴方、誰?」

まぁ、普通の反応か。それが。

僕も自分でやった事に責任は持てないし、よく分からない。

障害者の自分が何を言っても理解されないかもしれないが、素直に、正直に感じた事を答えた。

「……貴女が……。」
「え?」

どう言ったら分かってもらえるだろうなんて、往生際の悪い事をまだ考えながら続けて言った。

「線路の方へ……近寄ったので……危ない、と思って……。」

我ながら他に思い浮かばなかったのか、と言いたくなるぐらいの言い訳だ。