雨宮れんさんのレビュー一覧
「おめでとう! あなたは暗黒の王に選ばれました」
化け物から助けてくれた女の発した言葉から、勇介の日常は大きく変わっていく。
助けてくれたエルミの思惑は?
彼の護衛のためにやってきたデイトリアの抱える謎。
そして、百年前にあらわれたという男の真実とは。
魔物に対峙するために国境を越えて人間が一体となった時、あかされる勇介の決意。
傷を抱え、満たされぬ想いに身を焦がし、腹をさぐり合い、時には手を結び――複雑に絡み合う登場人物たちが互いにまみえた時――思いがけない結末を迎えることになります。
読み込みのタイミングが煩わしく感じるほどに夢中になって読みました。
血を得るためには、身体を重ねなければならない主人公。長い年月孤独のみを友とした彼の前に仲間がいるかもしれないという希望がやってきます。
彼に敵対すると思われた他の登場人物たちにも事情があり。次々に明らかになる真実に、その事情が絡まり合い、物語の世界に引き込まれていきます。
主人公のもとめる愛は望んだ形ではむくわれません。
必ずしもすっきりとしたハッピーエンドというわけではないかもしれません。けれど、確かに物語の世界で彼らは生きているのだと思います。
大学に馴染めなくて、一人で過ごしている莢。そんな彼女の前に現れた航は未来からやってきた莢の息子。
理由は違えど、互いに孤独を抱えている二人の間に流れる穏やかな時間。その時間もまた大切ではあるのだけれど、将来不幸になるから、と航に止められていたのに、莢は将来の夫、航の父と言われた三島と少しずつ親しくなってしまいます。
クリスマスの日、一人になることを恐れず三島に「彼女のところに行ってあげて」と言った莢は強くなったのだと思います。
作中、印象的に使われているのが、プリクラです。撮ったきっかけはほんのささいなことなのですが、莢はそれを大切に、航が教えてくれた未来を繰り返さないように違う道を歩いていけるのではないかな、と思います。未来に出会う運命の人は航の父である人とは違う人かもしれませんが。爽やかな読後感です。
一本目は、だまされた男性の復讐話と見せかけて大きなどんでん返し。すっかり騙されてしまいました。
二本目は挫折を味わった青年の再生につながる爽やかな物語。
テイストの違う二作ですが、同一世界の物語としてすんなり入り込むことができます。
どちらにも表れる、タイトルでもある謎のバー。狙ったように現れる三人の女性(スタッフ)たち。
そしてバーテンダー。
二つの物語を通して、このバーが重要な役割を果たすにも関わらず、真の姿にはたどりつかないのがもどかしかったですが、謎は謎のままにしておく方がいいのかもしれません。
彼らが関わることによって、どこまで物語世界が広がるのか見てみたい気がします。
幼い頃、公園で怪我をしてしまった主人公。彼女に怪我をさせてしまった蓮は償うかの様にひたすらに彼女につくす。
時が流れて、お互い別々の生活を送る様になっても、詩絵里に呼び出されればすぐにかけつけてくる蓮。
気持ちがないのなら、蓮を解放してあげなければと悩んでも、なかなかうまくいかなくて。
作中、ときどき描写される金魚の色が目に鮮やかで、それが逆に切なさをかきたてる。
けして楽な恋愛ではないけれど、読み終えた時にはほっと一息つけるような不思議な安心感に包まれます。
高校生活最後の夏。主人公が拾ったのはタイムスリップしてきた戦国武将。いつまでもこの時代にとどめておけない人とのひと夏の恋。終わりが見えているからこそ、美しいものにしたくなる。
泡がはじけた後、残ったものをぜひ体感してみてください。
彼氏に頼まれて講師として参加した塾の夏合宿。
参加したのは、一週間で七万円という報酬が大きな理由だった。
それのに、やる気のない生徒たち。普段教えている進学塾の生徒たちとはまるで違う様子に彩子はとまどう。
生徒たちが生意気!やる気ない!これでやってけるの! そうこの仕事に誘った彼氏に訴えるものの、彼の返答も満足のいくものではなくて。
けれど、一週間の間にいろいろなことが変わっていく。
中学生には中学生なりの。
大学生には大学生なりの。
悩みがあって、恋をして、嫉妬して、自分の小ささをしって、そして未来を夢見ることを彩子は知ります。
合宿が終わった時には、あれだけ反抗していた生徒たちとも絆を結んで、そして大切なことを学んだ彩子。
学び人夏週間。
まさしくそのタイトルがふさわしい、さわやかな作品です。
大地を豊饒に導く王、そして王を守る一なる騎士。
花が狂ったように咲き乱れた夜、生まれたばかりの王女に会った一なる騎士リュイスは、真の主を知ることになる。
悩む王、役目に忠実であろうとする騎士、彼を愛した侍女、愛されたいと願った王女。命を主に捧げたもう一人の騎士。
彼らの願いは互いに反する物ではなかったはずなのに。女神の意思はどこにあるのだろう。
壮大な世界が、ここに。
麻美の中で「暗い人カテゴリ」に分類されていた吉原正孝。ある夏の日、麻美は彼の携帯電話を拾う。後に彼がブログに綴っている内容を知った麻美は彼を呼び出し、戦うことを告げた。
ブログに綴られていたのは、吉原君が動物を虐待している様子。麻美はそのブログをありとあらゆる手段を使って世の中に広めていきます。炎上という言葉が当てはまるほどコメントが多数つき、匿名掲示板で語られるブログの内容。ブログの内容が警察に知られ、学校に来なくなった吉原君。その様子を見届けた麻美は、今度は事態の沈静化に乗り出していきます。その課程ほぼすべてが麻美の計算通り。
ネットの世界の表と闇をうまく使った麻美。最終的に彼女は勝利を収めます。こううまく行くはずはないだろうと思いながらも、パズルのピースが一つ一つはまっていくのは読んでいて痛快に思えるほど。最後にはきっとあ、と言ってしまうはず。
高校生最後の夏休み、最終日。亜弓は親友のハルカが伊藤君に告白するのを笑顔で見送った。
彼女も彼に想いをよせていることを告げないまま。
五年つきあった恋人からプロポーズされた亜弓は、『伊藤君』がプロのサッカー選手になっていたこと。ハルカが入院していることを知る。
あの夏の日。封じ込めたはずの想い。
亜弓の過去と現在が繋がり始める……。
ある程度年を重ねれば、当然結婚というのも視野に入ってくるわけで。それなのに、好きだと思っていた恋人にプロポーズされても素直に喜べない亜弓。一つ一つの心情がとても丁寧に描かれていて、特にプロポーズされて悩むくだりなど、とてもリアルでした。
封じ込めてきた過去に向き合い始めた時、初めて亜弓は自分の気持ちに素直になれたのかもしれません。
亜弓の出した結論は、必ずしも万人に受け入れられるものではないのかもしれないけれど。
ぜひ、ご一読を。
二年前、『かんのれあ』というペンネームで作家として出発した礼亜。ところが、担当の編集者である山崎が、礼亜の提出したプロットを他の作家に流していたことを知ってしまう。別の編集者河野と、山崎を見返すような作品を作り上げることになる。ところが、苦労してやっと仕上げた作品を出版した直後、河野は礼亜から離れていってしまう。元の編集者の山崎と組んで、礼亜はシリーズの続編を書き上げるのだった。河野と作り上げた作品の続編を。
まるで実際に体験してきたのではないかと思ってしまうような、リアルな人間関係にひきつけられました。読みながら山崎のやり口に腹をたてたり、河野のアドバイスにうなずいてみたり。個人的には山崎の評価はどうでもよくて、河野に認められるような作品が仕上がることを願いながら読み進めていました。
物語を作り上げるということと、正面から向き合った作品です。
地震により、日本のほとんどが壊滅した世界。奇跡的に生き残った人たちによって新しい世界が作られた。
成績優秀者五名が行くことを許されるホワイトフェンス。下位五名が行くブラックフェンス。そして、そのどちらにも属さない生徒たちが生きていく世界。
それぞれの世界に振り分けられた後、ブラックフェンスの向こう側へ行ったはずの涼から連絡が入る。
それは裕が生きてきた世界を、根本から覆す事件の始まりだった。
自分が生きてきた世界が、虚構だったと知った時、裕は重大な決断を迫られることになります。
仲間を助けたい。この虚構の世界を壊したい。その一念で、裕は戦いの中へと身を投じていきます。
最後に裕が出した結論は、必ずしも皆が満足のいく結末ではなかったかもしれません。
それでも、心はつながっていきます。虚構が崩壊した真実の世界で。
ぜひ、ご一読を。
コーヒーショップに置かれた一脚の椅子。
いろいろな人たちがその椅子に腰をかける。
椅子に伝わる、それぞれの気持ち。
椅子が壊れるまでの間にその椅子に腰をかけた人たちの物語と、椅子が壊れてから「友達」に出会うまで。そしてその椅子を作った男性の物語で構成されています。
一つ一つの物語は全てが完全なハッピーエンドというわけではないけれど。それでも読み終わった時にほっこりした気持ちになれるのは、椅子を作った男性の「心が折れたら」「壊れたら」「それで終わりじゃない」という言葉があったからでしょうか?
物には心がないと思いますか?
病弱でずっと入院している優香。占いでラッキーアイテムと言われたいちごオレを手に病院の中庭にいたところ出会ったのは同じ獅子座の秋人だった。同じ病院に入院している友達の見舞いに来ているという秋人と知り合いになったその日から、優香の周囲で恐ろしい現象が起こり始める。
だんだん近づいてくる黒い謎の物体。
鏡の中にうつる恐ろしい何か。
優香と一緒になって、次に何が起こるのだろうとどきどきぞわぞわしながらページを繰っていました。
守ってくれているはずの父親が、口にした信用するなという台詞。その真の意味に到達した時、「そういうことか!」とびっくりさせられました。
最後、秋人の想いにきゅんとなってしまいました。
最初一人称で始まっているのにプロローグの途中から三人称に変わってしまっているため、そこで流れがぷつんと切れてしまっているのがもったいなかったです。
新学期と同時に転校してきた少女結城羽鳥。
ありえない。なぜなら、彼女はあの日屋上から身を投じたはずなのだから。
「ただいま」
そう言って、羽鳥は笑いかけた。
かつての親友、仲間たちに。
それぞれの目線から語られる羽鳥の死。
少しずつせばまっていく羽鳥の仕掛けた罠。
そして転がり落ちた日記に記された事実。
かけ違ったボタンはほんの一つ。
その一つが、親友同士だった彼女たちの輪を壊してしまった。
どうして信じることができなかったのだろう?
最後に見つかった真実はあまりにも残酷なもの。
最後に彼女は問いかける。
「今でも、アタシの親友ですか?」
と。
その答えは、ぜひあなたの目で確認を。
彼女であった真千を、目の前で失った満。
真千が事故にあう直前、二人が訪れたのは『アンティークドール』という名の、綺麗な人形がたくさん飾られた店だった。
真千を失った満に、その店の美しい女主は告げる。
「私と勝負して勝ったら、過去を変えることのできるチョコをあげましょう」
と。
負ければ満の心臓を差し出さなければならないというゲーム。満は、そのゲームを受けることにする。大切な真千を取り戻すために。
次々に満の周囲でおこる不可思議な事件。そのたびに満の大切な人が失われていきます。次は何が起こるのだろうと、ページをめくるたびにどきどきしました。
あまりにも展開が速すぎて、ところどころついていけなくなってしまい、前のページへ戻らなければならなかったのがちょっと残念でした。その点を差し引くとしても、とても面白かったです。
交通事故にあった兄が息を引き取る直前、紗千が目撃したのは全身を黒に包んだ少年だった。彼がふりあげた黒い三日月が、兄の命を奪ったのを紗千は心に焼きつける。
四年が過ぎて、高校生になった紗千の目の前にあらわれた転校生。それは兄の命を奪った少年とうり二つの夜見柊だった。
全てを知っているかのような柊の言動、紗千の身の回りに起こる不可解な出来事。
次から次へと起こる事件に、物語がどこへ行き着くのかが気になって、一気に読み進めずにはいられませんでした。
最後まで読んで、ああよかった、と。ハッピーエンドで、本当によかったです。
まず、タイトルの『ポテトボーイ』ってなんだ?と興味をそそられ、日頃読まないタイプの物語であるにも関わらず、ページを繰っていました。
人一人死んでいるわりに主人公やその友人たちの悲しみがいまいち薄かったり、主人公が暴行を受けたにも関わらず、彼女の両親の動きがまったく見えてこないなど、いくつか気になる点があるものの、最後まで続きが気になって一気に読んでしまいました。
気がついたら一気に最後まで読んでしまいました。これが読ませる力、吸引力なのかなぁと思いました。
気になる点が読後に消化不良的な感覚を残してしまって、残念なので★一つマイナスで。
戦後の復興期。 自衛隊は軍隊としてではなく、自衛のための部隊へと変貌を遂げようとしていた。 作家三島由紀夫は、その現状を憂い、自衛隊員たちの蜂起を願って、自ら腹を切る。 彼に心酔する森田必勝とともに。 この時代背景は、まったく知識がないのでたいそうなことは言えないのですが、綿密に資料をあたったであろう確かな筆致。 重厚に描かれた世界にとことんひたることができました。 今の若者とは、まったく違う当時の若者たち。 彼らの取った方法は、間違っていたのかもしれませんが、国を憂うその心には嘘はなかったと思います。 これもまた、一つの青春なのでしょう。 振り仮名を多用しているため、携帯では非常に読みにくいのですが、時間をかけてじっくりと読みたい作品です。
戦後の復興期。
自衛隊は軍隊としてではなく、自衛のための部隊へと変貌を遂げようとしていた。
作家三島由紀夫は、その現状を憂い、自衛隊員たちの蜂起を願って、自ら腹を切る。
彼に心酔する森田必勝とともに。
この時代背景は、まったく知識がないのでたいそうなことは言えないのですが、綿密に資料をあたったであろう確かな筆致。
重厚に描かれた世界にとことんひたることができました。
今の若者とは、まったく違う当時の若者たち。
彼らの取った方法は、間違っていたのかもしれませんが、国を憂うその心には嘘はなかったと思います。
これもまた、一つの青春なのでしょう。
振り仮名を多用しているため、携帯では非常に読みにくいのですが、時間をかけてじっくりと読みたい作品です。
国境近くの森。翡翠の髪を持つ少女エミリアは、隣国の王子レオと出会う。
親戚の家で虐げられていたエミリアを、自分の国へと連れて行くレオ。
互いに二人は惹かれあっていくようになるのだけれど……。
毎日のように暴力をふるわれ、平和な日があるということを忘れてしまっていた彼女を包んだのは、レオの優しさでした。
運命を受けとめレオの優しさを受け入れながら、自分の足で自分の道を行こうとするエミリアの姿には、とてもあたたかい物を感じました。
身分なんて関係ない。
ただ互いを思いやる気持ちさえあれば。
シルク王国に連れ戻されたエミリアの行動には驚かされましたが、髪はまた伸びてくるのでそれを楽しみに待つことにしましょう。
二人の初々しい関係が、とっても可愛らしくて、最後まで一気に読み進んでしまいました。
読み終わった後、笑顔になることができる恋物語です。