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上杉漱五郎
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レビュー一覧
2009/02/28 03:55
ネタバレ
昇華される雪景色
雪待ちから始まり、雪解けで終わるまでの七つの詩。タイトルの度に現れるレイアウトの雪が、進むごとにひらひらと舞い落ちていき、最後の雪解けの際に溶けていたのには和んだ。
到着点がとてもいい。雪を待っている風景、歩いて行く風景、雪と戯れる風景、そしてそれらは最後に全て、雪解けの詩と共に昇華していく。それはまぎれもなく雪の華、雪花の詩だ。
雪という単語を多く交えて言葉は連なっていくけれど、詩自体には不思議な温熱を感じる。これは言葉の投げ方に寄る所が大きいのだろうか。非常に柔和なスローイングだ。その中に時折、鋭さのある文語的な日本語が混じったりして、たおやかな品も感じさせる。
空に浮かぶは雪模様。そこに重なる心模様。やはり、人の素直な温情や強さ、恋心が素直に描かれているからこそ、雪世界の詩だけれど、こんなにも不思議な温熱を感じるのだと思う。浸透してくる。
2008/11/11 03:20
“心惹かれる純さ”
考え、悩み、動き、伝え、感謝し、笑う。それはまさしく温かい命そのものである。“生きて、いる”こと。最後のエピローグで語られるこの一語に続くまでの小説があった。やはり真剣に生き、悩み、思いを巡らしている身近な風景がそこにあるからこそ、こういったテーマがきちんと浮かび上がっている。“独りじゃない!”との結びが力強く聞こえた。
動物視点ではあるけれど、着眼点は人間のかけがえのないところの可能性で、心に浮かび上がるいくつもの健康な風景が、その度に胸を温かくさせてくれた。
登場人物のそれぞれに“心惹かれる純さ”があった。不器用なほどに正直でいて、思いやりが深い。
心が澄むこの懐かしい匂いを、胸一杯に吸い込んで、明日の心へと刻みたい。
考え、悩み、動き、伝え、感謝し、笑う。それはまさしく温かい命そのものである。“生きて、いる”こと。最後のエピローグで語られるこの一語に続くまでの小説があった。やはり真剣に生き、悩み、思いを巡らしている身近な風景がそこにあるからこそ、こういったテーマがきちんと浮かび上がっている。“独りじゃない!”との結びが力強く聞こえた。
動物視点ではあるけれど、着眼点は人間のかけがえのないところの可能性で、心に浮かび上がるいくつもの健康な風景が、その度に胸を温かくさせてくれた。
登場人物のそれぞれに“心惹かれる純さ”があった。不器用なほどに正直でいて、思いやりが深い。
心が澄むこの懐かしい匂いを、胸一杯に吸い込んで、明日の心へと刻みたい。
2008/09/03 22:45
幸せへの階段を上って行くような
忘れかけていた足元にある在りし日の些細な幸福を、見つめ直す小説だった。
歳を重ねると付き合いも増え、そこに慎重さが増したり、経験が勇気をくじく時もある。私も、そうか…。
そんな私が見たからなのかもしれない。この小説は痛いほどに純粋だった。背伸びしない恋というか、等身大の恋というか、お互いに謙虚に健気に相手を認め合い、大切にし合う姿勢には、深く安心させられた。
初恋のノスタルジィといった過去を振り返る様な読後感だけで無く、こんな恋愛をずっと大切にしていたいと、未来へと意識させられていく読後感だった。
ミーナの初恋。
幸せへの階段を、踏み外す事なく一段一段と登って行くような、そんな恋愛になるんだろうなと、彼ら彼女らに思いを寄せながら、一つこのレビューを終えてみたいと思う。
純粋。この言葉を二度と忘れたくなくなるような、本当に素敵な作品だった。ありがとう。
忘れかけていた足元にある在りし日の些細な幸福を、見つめ直す小説だった。
歳を重ねると付き合いも増え、そこに慎重さが増したり、経験が勇気をくじく時もある。私も、そうか…。
そんな私が見たからなのかもしれない。この小説は痛いほどに純粋だった。背伸びしない恋というか、等身大の恋というか、お互いに謙虚に健気に相手を認め合い、大切にし合う姿勢には、深く安心させられた。
初恋のノスタルジィといった過去を振り返る様な読後感だけで無く、こんな恋愛をずっと大切にしていたいと、未来へと意識させられていく読後感だった。
ミーナの初恋。
幸せへの階段を、踏み外す事なく一段一段と登って行くような、そんな恋愛になるんだろうなと、彼ら彼女らに思いを寄せながら、一つこのレビューを終えてみたいと思う。
純粋。この言葉を二度と忘れたくなくなるような、本当に素敵な作品だった。ありがとう。
2008/06/22 21:09
少女が望む(臨む)青春の“青”写真
誰しもが少年、少女を経験する。あの時に果たして、私はどんな青春に物足りなさを感じ、どんな青春に思いを膨らませていただろうか?そんな事を冒頭で思った。
人の青春を感じると、自分が寂しくもなったりする時がある。ヒロインは何ら変わりない日常に、心の内で大きな青春を期待して、やがてそれは唐突にやってくるが、不気味で不可解で手に負えない程に悩ましくもあるものだった。しかしそれを心のどこかで激しく求めてもいる自分…。それは冷めた日常に起きた、青い発熱だった。
一人の少女を中心に、二人の男性が巡る。少女が非常に思い詰めて考える様な所も多々ある中で、最後まで、色々と感じた所は少女のそれそのままにと、みずみずしさも失わなかった。話の中にも活字が出せる緊迫感を感じた。
ごめんねの辛さは、いつかありがとうの充実にも変わる時が来る。ヒロインが最後に力強く放った一言に、深い感慨があった。
誰しもが少年、少女を経験する。あの時に果たして、私はどんな青春に物足りなさを感じ、どんな青春に思いを膨らませていただろうか?そんな事を冒頭で思った。
人の青春を感じると、自分が寂しくもなったりする時がある。ヒロインは何ら変わりない日常に、心の内で大きな青春を期待して、やがてそれは唐突にやってくるが、不気味で不可解で手に負えない程に悩ましくもあるものだった。しかしそれを心のどこかで激しく求めてもいる自分…。それは冷めた日常に起きた、青い発熱だった。
一人の少女を中心に、二人の男性が巡る。少女が非常に思い詰めて考える様な所も多々ある中で、最後まで、色々と感じた所は少女のそれそのままにと、みずみずしさも失わなかった。話の中にも活字が出せる緊迫感を感じた。
ごめんねの辛さは、いつかありがとうの充実にも変わる時が来る。ヒロインが最後に力強く放った一言に、深い感慨があった。
2008/04/26 11:58
心の深淵を純粋に、声にならない声で叫ぶ
闇の中より溢れ出し、突き抜けてくる本音の文学。
“生の意味”これを安易に問うところを超越した境地に、この作品の世界は見事存在している。
一つの命を考えた。
またそこから、その意味を考えた。
すると主人公の本音が聞こえてくる。
すれば、その特質なる世界観の門が開く。
…相対的な命の意味を問うているのではない。
絶対的なる主人公だけの命の意味を問うているのだ。
“命”そのものは絶対に大切であるに違いない。
しかし“主人公だけの命”に焦点を当て、もっと大切に汲み取りたい。
一貫して文は脈を打ち、鼓動をしている。
また主人公の立場を、至言と形容して誇張では無い程、巧みな代名詞と描写で表しきったと思う。
事後の展開も非常に深かった。
“生きている意味”…ならばいつの日かそれを見つける事を、生きる意味としてやろうじゃないか。
闇の中より溢れ出し、突き抜けてくる本音の文学。
“生の意味”これを安易に問うところを超越した境地に、この作品の世界は見事存在している。
一つの命を考えた。
またそこから、その意味を考えた。
すると主人公の本音が聞こえてくる。
すれば、その特質なる世界観の門が開く。
…相対的な命の意味を問うているのではない。
絶対的なる主人公だけの命の意味を問うているのだ。
“命”そのものは絶対に大切であるに違いない。
しかし“主人公だけの命”に焦点を当て、もっと大切に汲み取りたい。
一貫して文は脈を打ち、鼓動をしている。
また主人公の立場を、至言と形容して誇張では無い程、巧みな代名詞と描写で表しきったと思う。
事後の展開も非常に深かった。
“生きている意味”…ならばいつの日かそれを見つける事を、生きる意味としてやろうじゃないか。