NV（Not Vampires）という「ヴァンパイアの一族なのに普通の人間として生まれてきた」という設定が非常にキャッチーで、差別を受けながらもまっすぐに生きるヒロインの成長や葛藤がしっかり書かれています。3人のヴァンパイアたちとのエピソードもあり、長編で読みたい作品と審査会では満場一致の大賞受賞でした。文字数上限ぎりぎりまで、内容をしっかり書いてあるのも加点ポイントでした。

ヒーローが「純血のヴァンパイア」で、その特性に絡めた展開なども多く読んだ後の満足感が高い作品でした。野いちごでは珍しい口数多めのヒーローですがカッコよさとのギャップの相性がよく書けています。好きになるまで描写がもう少し丁寧に書かれているともっと良くなるのではないでしょうか。「血の匂いがする」などのヴァンパイアものならではの詳細描写は、表現をもう少しマイルドにしても良かったかもしれません。

王道らしいカッコいいヒーローや、ドキドキするエピソードが盛りだくさんで読んでいてとても楽しい作品でした。「ヴァンパイアの学校に1人だけ人間が混ざっている」という逆転の発想がお見事です。胸キュンポイントをたくさん押さえてくれているので、次は作家さんの個性がもっと感じられるエピソードやイベントを書いてほしいなと思います。

人間と吸血鬼の男女がペアとなって契約関係を結ばなくてはいけない学園の特殊さと、ヒロインの持つ特別な血という設定に冒頭から惹き込まれました。ヒーローがひたすらに一途でヒロインを強く溺愛していると伝わります。全体的にストーリーが安定していたので、2人の仲をぐっと深めるような大きな仕掛けやイベントを挟んで、展開に緩急がつくと作品の魅力はさらに上がると思います。

年上ヒーローならではの包容力、秘密の同居や関係など、読み手を惹きつけるような設定が盛りだくさんで非常に読み応えがありました。ダークめな作風で、しっとりとした大人っぽい雰囲気が印象的。作品で描かれるヒロインの生い立ちや謎に包まれたヒーロー像に続きが気になり、読み進める手が止まりませんでした。野いちごらしさとはまた違った雰囲気でしたが、独創的で素敵な作品でした。