とある田舎の、小さな小さな国で
貧しい老婆が一匹の猫を買っていた。
老婆は一人、
毎日隣に猫をおいて
他愛のない話を繰り広げた。
死んだ旦那の話、
昔聞いた女の子のおとぎ話、
ひどく幸せだった時の話、
時には恐ろしいくらいの残酷な話。
猫は老婆が好きだった。
美味しいものは食べれないし、
冬は寒いし、体も汚かった。
それでも、
猫を愛してくれる老婆を
猫も愛していた。
そんなあるよく晴れた日に、
老婆が死んだ。
優しい目をした老婆が
死んだ。
猫は泣いた。
とても泣いた。
何日も泣き続けた。
終いに声が枯れた。
力も尽きてきた。
胸が苦しくなった。
猫は辛かった。
一度でも老婆に、
あの人に会えたら猫は---。
それから猫は、死んだ。
ただ、
老婆の遺体の横で死んだ猫の遺体は
見つからなかったそうだ。