―――教室―――
結局、入学式は予定より早めに終わった
さっきの不良先輩のおかげ…?
「ねぇ!さっきの先輩!」
「あ~、名前なんて言うんだろうね~?
かっこよかったなぁ~」
後ろの席の子達の会話が聞こえた
「ウフッ私、
実は名前知ってるんだぁ♪」
「え~なになに?」
「まず、前にいたのがサクライ先輩で右にいたのがスズキ先輩
左にいたのがオカザキ先輩で、後ろにいたのが…シバカイ先輩!」
「へぇ…」
なんて盛り上がっていた
ふーん。そうなんだ
なんて、聞き耳を立てていると…
「ねぇねぇ
名前何て言うの?」
誰…?
振り向くと…
「わぁ…」
うっかり声を出してしまった
パッチリ二重のクリクリお目々
さらさらの髪は横でひとつに纏まって
化粧してないんだろうけど
色が白い
美人…
「えっ、あのぉ…」
「えっ?あっ、ごめんね!私は○○中から来たの。
藍川舞って言うんだ。」
無言だったから不安になったのか
声をかけなおされた
「そうなんだ
私は小林紗香(コバヤシ サヤカ)だよー
舞!よろしくね」
「うん…」
何か…
こういう人苦手だな
その後、
先生と軽い挨拶をして解散となった
私は一目散で彩のクラスへ
「彩っ…」
彩のクラスを覗くと彩はたくさんの友達に囲まれていた。
…凄いな。
クラスが離れたから私は不安だったのに…。
彩は違ったの…?
「ッ!」
今…自分の中に黒い思いがあった…。
…私はいつも彩と一緒で
その分いつも不安だった。
彩と比較して。
勝手に傷付いて…
馬鹿みたい…。
この日
私は彩に声をかけずに一人で帰った。
―――家―――
「はぁ…」
ベッドで憂鬱な気持ちのまま横になっていた
~♪
と、急に携帯が鳴った
彩かな?
勝手に一人で帰ったから怒ったかも…
『具合でも悪いの?
先に帰っちゃうなんて珍しい…』
…彩はいつも優しい
責めるわけでもなく心配してくれて
『ちょっとお腹痛くて…』
そんな彩の優しさに甘えてしまう
『えっ!?
大丈夫…?
無理しないでね!』
ポロ…
色々な感情から
私は涙を溢した
彩…
ごめんね……
それから一週間後
いつものように彩と帰っていた
「ねぇ舞~♪」
「なに?」
何だか彩が嬉しそう
「私ね、学級委員になったんだぁ」
「そうなんだ!良かったね♪」
「うん♪」
そう言って彩はニッコリ笑った
「舞のクラスは?」
「あーと、小林さん…」
「あ~、あの小林さん?」
…えっ?
「なんで彩が知ってるの?」
「同じクラスの子が言ってた。
凄い美人でしっかりしててみんなの中心にいるんでしょう?」
「全くその通りです…」
「でも…
私は舞の方が可愛いと思うなぁ」
「…は?」
「うちのクラスでも話題だよ?
小林さんに並ぶ可愛い子がいるって」
「嘘だぁ」
「ホントだって!」
……まぁ、冗談だとしても嬉しいけど
「あっ、じゃあ舞バイバイ♪」
いつもの場所で彩と別れた
彩と別れてしばらく一人で歩いていると
「くっ…」
どこからか声が聞こえた
「…?なに?」
辺りを見渡すと
「っっ!」
声にならない叫びが出る。
そこには…
あの不良グループの一人がいた
えっと…この人は確か後ろにいたから…
『後ろにいたのが…シバカイ先輩!』
シバカイ先輩か…
「…おい」
ビクッ
突然低い声で呼ばれて肩が上がった
「は、はい…?」
恐る恐る振り向いた
あー怖い…
…あれ?
この人血が出てる…
「あ、あのぉ…」
「あ?」
うっ…(泣
私はポケットからハンカチを取り出した
「こ、これ…
血が出てるみたいなので…」
「…」
あぁ無言は止めて…
「じゃあ…私はこれで」
「ちょっ、おい!」
呼び止められそうになったが
もう無我夢中で家へ向かった
――翌日――
私はいつものように彩と登校していた
「ねー聞いてぇ
昨日さぁ…」
「なに?」
「シバカイ先輩に会ったんだ…」
「シバ…なに?」
あっ、そっか
「シバカイ先輩はあの不良グループの中の一人」
「ふーん。で?」
「いやーね?
血が出てたからハンカチ貸してあげたの!」
「こわ…舞優しー…
っっ!」
「まぁ頑張ったんだぁ…
ってどうした?」
私の後ろを青ざめた顔で見ていた
不思議に思って振り向くと…
「っっ!」
あぁ…やってしまった…
そぅ、後ろにいたのは…
「シバカイ先輩…」
「…」
グイッ
腕を引っ張られる
連れ去られる!?
「…彩…!」
必死で彩に助けを求めた
…が、彩はただ呆然としていた
ズルズル
無理矢理連れていかれる
誰か…助けて…