この街では、4月に桜は咲かない。
雪解け水に反射する光がまばゆく、コンクリートの上を歩くことこそ、新鮮な春の兆しであるような気がした。
なのに、入学式の日に限って、一週間ぶりに雪が降った。恋李は初めて4月の雪を見た。
「市ヶ谷さんっていうの?この前バスケ見に来てたよね。」
入学式と教室でのホームルームを終えた後、恋李に同じクラスの男子が話しかけた。
「ああ。 あんたもバスケ部?」
「そのつもり。萩本蓮、よろしく。マネなのに観に来るって、珍しいじゃん。俺気になってたんだよ。」
「せやろなー、まあ色々あってなー、誘われて行った。」
「え、関西弁?? ハハッ、なんかお前面白いな。 それじゃあ明日!」
「うっす。ほなな。」
「ほ、ほな!!ハハッ。」