「今のはお前が取りに行くんだよ、パスは悪くねえぞ!」
園田先生と同様、恋李のゲームを見る目にも熱が入る。
「園田先生、さっきから9番のオフェンスリバウンド、流れ一気に変えますね。」
「ああ、たしかにな。あいつはー、」
「あれえっ?」
恋李は目を細めた。
9番が、高く跳ね、シュートをうつ。ボールはリングの淵ををなぞるようにして、スムーズにネットをくぐった。
左手が伸びきらず、少し身体を斜め前にに出しながらシュートをうつ、あのフォームはまるで…
「…トトロ?」
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コツンッ
背の高い縁石に立つ、8歳の少女の背中に小石がぶつけられる。びっくりして、思わず砂浜に落っこちそうになった。
海原が広がり、風が吹く、ここは父の故郷。白いワンピースの裾がはためく。
つばの広い麦わら帽子が、かんかん照りの太陽の光をふせいだ。
「なにすんねん!痛いわっ!」
「うおっ、喋った!にーげろー!!!」
数人の子供たちが走り去る。恋李は縁石から飛び降りて、祖母の家の近くの、バスケットコートへ向かった。