「行っちゃう?マジ?」
「だって、マネ志望の子かもよ?」
選手たちのプレイが止まっている中、
2人の女子マネージャーの声が恋李に近づく。恋李はあくまでも無表情だ。
「(わー…なんかこっちくる…!)」
「ねえねえ、もしかして見学?マネ入ってくれるつもりなの?」
「あ、お邪魔してます。は、入るつもりです。あの、よろし」
「めーーーっちゃ可愛い!!お人形!!やばいやばい!」
「すごい嬉しいんだけど!!ありがとうね!ほんとか〜わいい〜。てかちょっと訛ってない?関西弁??」
「…や、はい。(やかましい!!なんなんだ!!)」
恋李は基本的には無表情、声のトーンも低く、根暗であると自負していた。小学校のときのあだ名は日本人形。けれど実際はノリ上手、男の子たちの輪の中で一緒にふざけあうことが多かった。
「女の子の前だと、ただの恥ずかしがり屋だよねー。」
恋李の親友、もとい清南中のバスケ部員たちはよくそう言った。
再びデジタイマーが鳴る。すぐに、先程の景色がよみがえった。