４時３０分頃、俺は十三の家を出た。

そしてそのまま雑貨屋に向かった。


財布の中身を確認しながら品物を選ぶ。

綺麗なブローチが目にとまった。

この綺麗さでこの値段なら悪くない。

しかもお袋の好きそうな感じのブローチだ。

店員さんにプレゼント用に包装してもらい俺は家に向かった、びっくりして喜ぶお袋の顔を想像しながら…。

いつもなら重い足取りも今日は軽く感じた。


「ただいま。」

その言葉とともに寂しさが込み上げてきた。

…家には誰もいなかった。

その日、お袋は家に帰って来なかった。


俺は次の日の朝を玄関で迎えた…。

「馬鹿みてぇ…。」

その独り言が妙に響く。

部屋にあがりブローチをゴミ箱に捨てた。

布団に寝転び数時間後に笑い声と共にお袋とオッサンが帰ってきた。

少しして階段をあがってくる音が聞こえた。

「仁志、帰ってたのね…。あの、昨夜は…。」

お袋の言葉を遮る様に俺は部屋から出て、家からも出ていった。