龍ちゃんが家に帰りたくない気持ちは分かっていた。

だから俺はさりげなく家に泊まりに来てよとよく誘ったが、断られる回数が多かった。

龍ちゃんにはきっと俺の考えがバレてたのかもしれない。

それでも龍ちゃんは嫌な顔一つしないで毎回、俺の誘いに答えてくれていた。



俺は馬鹿だから龍ちゃんの為に何をしたらいいのかさえもわからなくて…俺が考えてしていた行動も、龍ちゃんを苦しめるだけだったんだろうね…。



俺は学校には戻らず海岸沿いの堤防に腰掛け、空を見上げ夕方近くまでボーッとしていた。



龍ちゃんはよく海岸沿いの堤防に来ていた。



あの頃の俺は、ただ単に龍ちゃんがその場所を気に入っていたと思ってた。

でも違ったんだね。

あの場所は龍ちゃんと親父さんの数少ない思い出の場所だったんだね。

その事を教えてくれるのはもう少し先の事だけど、その話をしてくれた時とても嬉しかったのをハッキリと覚えている。


あの頃の俺がもっと龍ちゃんの痛みに気が付いてたら、こんな事にはならなかったのかな…。

ごめんよ、龍ちゃん。

こんな俺でも嫌いにならないでいてくれる…?