「お邪魔しました。」

そう言って帰って行ったヨネ。

俺はテレビを見ながら「おぉ、ご苦労さん。」と言って手を挙げた。

十三は玄関までヨネを見送っていった。


「お前さ呼び付けたんだから、見送りぐれぇしろよ。」

玄関から戻ってきた十三が、ソファーに座りながらそう言ってきた。

「見送りなんかしたら寂しくなんだろ。そしたら帰したくなくなんじゃん。」

と俺は答えた。

「…そうかぁ?」

十三が不思議そうに言った。

「そうなんだよ俺は。」

俺は平然を装いそう答えた。


俺は見送る事が嫌いだった。

親父があの家から出て行く時、何も知らなかった俺は「いってらっしゃい。」と笑顔で見送った。

…そして親父は二度とあの家に戻ってくる事はなかった。

その時の事が今でもトラウマになっているのかは、わからない…ただ、見送るとその人にもう二度と会えない気がして哀しくなる…。

だから俺は出来るだけ見送る事はしなかった。




 お前の辛い顔を見たくなかった…なのに、俺のせいでお前に辛い顔させちまうなんてな……情けねぇよ。