【米山康助】
あの日は雨が降っていた。
龍ちゃんに山さん、俺は学校をサボって山さんの家に向かっていた。
「傘持って歩くのダリィよなぁ。」
ダルそうな顔で龍ちゃんが言った。
最近は梅雨の季節という事もあって雨の日が毎日の様に続いていた。
山さんの家に向かって歩いて行くと海岸沿いがある。
その堤防に龍ちゃんはよく来ている。
「龍崎この場所好きだよな。」
山さんがそう龍ちゃんに言った。
「別に好きってわけじゃねぇよ。」
と龍ちゃんは微笑みながら言った。
「そうなんスか?俺も好きだと思ってたっス。」
そう言うと龍ちゃんは堤防に飛び上がり海を眺めて言った。
「ここに来ると素直になれる。俺がちっさい頃、親父がそう教えてくれた。…ここにきた、親父が居るような気がして…会いたい時にはここに来てんだよ。」
そう言って龍ちゃんは振り返り、ニカッと笑って「会えるわけねぇのにな。」と言った。
その時、初めて龍ちゃんがここに来ていた理由を知った。