「あぁ、なんか空気が沈んじまったなぁ。」

苦笑いでそう言って龍崎は堤防からヒョイッと飛び下り、俺の家に向かって歩き始めた。


「龍崎…お前……ロン毛は似合わないだろうな。」

龍崎の後ろ姿に向かって俺は微笑みながらそう言った。

「はぁ?何言ってんだよ!俺はどんな髪型だってバリッと似合うっつーの!」

と龍崎は笑顔で答えた。

するとヨネも「似合わないっスよ〜。」と笑っていた。



あの時の俺は、何時もの龍崎が見たくて…あんなくだらない事しか言えなかった。



その日は俺の部屋で漫画を読んで過ごした。





あの日、龍崎が話してくれたこと目茶苦茶、嬉しかった…。

それは今まで見えなかったお前の昔が、見えた気がしたからだ…。



お前の両親が離婚してた事は知り合った頃、話してくれたから知っていた。

だが、それからの事は全く知らなかった。

お前のお袋さんが再婚した事も。

新しい親父になった奴が暴力をふるっていた事も…。




…もっとお前の話し聞いてれば

…もっとお前の言葉汲み取ってれば

…もっとお前の事わかってれば

もっと、もっと、もっと……。