【山口十三】


雨の日が続く六月上旬。

俺と龍崎、ヨネは俺の家に向かっていた。


「雨ばっかっスね。」

ヨネが空を見ながらそう言った。

「傘持って歩くのダリィよなぁ。」

とダルそうな顔で龍崎が言う。



俺の家に行く途中に通る海岸沿いの堤防に差し掛かった。

「龍崎この場所好きだよな。」

と俺がそう言うと微笑みながら龍崎は答えた。

「別に好きってわけじゃねぇよ。」

「そうなんスか?俺も好きだと思ってたっス。」

とヨネが言うと龍崎は堤防にヒョイッと飛び上がり海を眺めて言った。

「ここは親父との数少ねぇ思い出の場所なんだよ。」




その時、初めて龍崎の昔を知った気がした…。





「ここに来ると素直になれる。俺がちっさい頃、親父がそう教えてくれた。…ここに来たら、親父が居るような気がして…会いたい時にはここに来てんだよ。」

そう言って龍崎は俺達の方に振り向いて、ニカッと笑い「会えるわけねぇのにな。」と言った。


そんな龍崎に俺は何も言ってやれなかった…。