竹ノ内の家の前に見覚えのある人が立っていた。

その人物はお袋だった。

「仁志…。」

俺に気がついたお袋が俺の方に近寄ってきた。

お袋の姿を見たのは、お袋の誕生日の次の日の朝以来だ。

「何だよ。」

「元気してる?」

「あぁ。」

「これ…。」

と言ってお袋が渡してきたのは大きめな紙袋だった。

中身を見ると俺の服が沢山入っていた。

お袋の姿を見た時、俺はてっきり「帰ってこい。」と言いにきたと思った。

でも全く違った…。

俺は「帰ってこい。」の言葉を期待していた…。

そんな事を言ってくれるわけないことくらい、心の底じゃ分かっていたつもりだった。

でも何故だろう…。

紙袋に入った俺の服を見た時、妙に心が沈んでいくのを感じた。