「プラチナか。やるなぁ、ミラ子」

「せやろ? うちかて手土産なしに、あんたんとこ来るわけないやろ。来るからには、ど〜んと一つ、花火打ち上げさせて貰います」

「ありがたいね」

 軽く言い、真砂はくいくいとグラスを空けていく。
 85万円が、みるみるなくなっていく。

「いただきま〜す。美味し〜っ! 俺、こんな美味い酒、初めてかも〜」

 ラテ子の横で、捨吉が無邪気にはしゃぐ。

「そか? あんたはまだ若造やからなぁ。頑張って太客手に入れることやな」

「俺についてりゃ、いつでも飲めるぜ」

 にやり、と言う真砂に、ミラ子社長は、きっと目を向ける。

「ちょっと真砂。あんたの太客はうちやろ? いくらあんたがNo.1やかて、うちがあんたの一番の太客やろがっ」

 言い募るミラ子社長に、真砂は目を細めた。
 否定も肯定もしない。
 その表情に、ミラ子社長は口を尖らせる。
 ラテ子はどきどきと、そんな二人を見つめた。

---うーわー……。何か……もしかしてこの男、ドSなんじゃないの? しかも直接いたぶるんじゃなくて、じわじわ心理的に追い込むなんて、まさに真正のドSだわーっ!!---

 そういう風に見てみると、今の真砂は楽しそうだ。
 そしてそんな表情の真砂は、まさに魅力五割増し。
 ラテ子のにやにやも五割増し。

「そんじゃ真砂。うちがあんたの一番やってこと、証明したるわっ」

「ほぅ」

 面白そうに言う真砂の横で、ミラ子社長は、扇をびしっと清五郎に突き付けた。

「プラチナ、もっと持っておいで!」

 ラテ子は目を剥いたが、真砂は少し顔をしかめた。

「おいおい。花火も同じものばかりだと飽きるぜ」

 さらっとお高いオーダーを拒否する。
 そしてグラスを傾けながら、少しだけミラ子社長に身体を寄せた。

「大体、花火はばんばん上げてなんぼだろ」

「うう〜ん、せやなぁ」

 真砂に寄り掛かられ、ミラ子社長は相好を崩す。
 そして、ばし、と扇で己の太腿を叩くと、ばっと立ち上がって宣言した。

「よっしゃ! ほんならゴールドや!」

「ランク落ちてんじゃねぇか」

 眉を顰めて言う真砂に、ミラ子社長は、ちちち、と指を振る。

「安心しぃ。ゴールドはゴールドでも、タワーやで! 行っとこ! シャンパンタワーや!」

「ええっ! すっげー!!」

 真砂よりも捨吉が、立ち上がって目を輝かす。

「畏まりました。すぐに」

 清五郎が、さっと立って奥へと去る。
 そしてすぐに、シャンパングラスが山と積まれたワゴンを押して来た。
 途端に店中のライトが細くなり、タワーにスポットライトが当たる。