「プラチナやっ! ど〜んと持っておいでや!!」

「おお〜っ! さすがミラ子様! 承知しました! すぐにお目当てのプレイヤーも寄越します故」

 ささっと立ち上がった清五郎が、軽い足取りで駆けていく。
 ラテ子はメニューに穴が空くほど、料金欄を見た。
 目は目玉が落ちそうなほど見開かれている。

「しゃ、社長っ……!! はは、はちじゅうごまん……!!」

「それが何や。そんなもん、安いもんやで」

 ひらひらと扇を振りつつ、ミラ子社長は優雅に笑う。
 と、そこに、かつんと靴音を響かせて、一人のホストがやってきた。

「ようこそ、ミラ子」

 そのホストが入っただけで、ボックス席の空気が変わったようだ。
 ぴりっと引き締まった空気に、ラテ子は思わず顔を上げた。
 そして、ミラ子社長の横に立つホストに釘付けになる。

---すすす、凄い……!!---

 纏う空気もその辺のホストとは段違いだが、見かけからして、もう全く違う。
 一見ホストには見えない、チャラさなど微塵もないその外見は、今まで見たこともないほどのイケメンだ。

「おお真砂〜。もぅ、あんたはつれないなぁ。久々やっちゅーのに、お待ちしておりましたぐらい、言ってくれてもええんちゃうの?」

 ミラ子社長が嬉しそうに、己の横をぽんぽんと叩いて言う。
 真砂と呼ばれたそのイケメンホストは、ミラ子社長の横に座りながら、清五郎が持ってきたシャンパンボトルを受け取った。

「待ってたのはミラ子のほうだろ? 今来たばっかりじゃないくせに」

 言いつつ、ミラ子社長のグラスにシャンパンを注ぐ。
 ラテ子はそんな真砂を、メニューの陰から、じっと観察した。

 どうもこの真砂は、他のホストとは違うようだ。
 客のご機嫌を取るわけでもない。
 むしろ少し横柄だ。
 しかし何故か、それが妙に似合う。

---俺様キャラなわけかしら。確かに似合う。この人になら、何言われてもいいかも!---

 にやにやと真砂を見ていると、清五郎がラテ子にもシャンパンを勧めた。
 にこりと爽やかに微笑む。

---うう、この人も捨て難い。オーナーってことは、ずっとこの席にいてくれるわけじゃないのかしら。でもスナックのママとかは、お客さんの席で飲んだりするわよねぇ---

 ぎくしゃくと清五郎からグラスを受け取り、ラテ子はちらりと横にいる捨吉を見た。

---この子も可愛いけど。ちょっと若過ぎるかな。渋みがないわぁ。いやでも、可愛いからいいけど---

 どうもこの店は、やたらとちゃらちゃらした、いかにもホストという男はいないようだ。

---さすがはミラ子社長。ホストクラブ一つ取っても、ちゃんと選んでる---

 妙なところに感心しつつ、ラテ子はミラ子社長を見た。