「何だ、この中身は」

 綺麗に中身が包まれていて、見ただけでは中身まではわからない。
 こういうところだけ丁寧な仕事をしやがって、と思いつつ言うと、深成が、へら、と笑った。

「わかんない」

「お前が作ったんだろうがっ」

「そうだけど、忘れちゃった」

 最悪だ、と真砂は頭を抱えた。
 ある意味本当の爆弾だ。

「食い物なんだろうな」

「あったり前じゃん。わらわ、食べ物は粗末にしないよ?」

 言われてみればそうだ。
 食に対する執着は人一倍の深成である。
 そう考えると、中身もさほど妙なものではないのではないか。

 だが、何せ深成のことだ。
 突拍子もないことをしでかす可能性もある。
 お菓子好きなこの子供のこと、飴玉とかチョコとか入れてたら……。

「……いや、一応お前も中学生だしな。お前に恨まれる覚えもないし」

 ぶつぶつ言う真砂に、深成は自分の皿にもおにぎりを取りながら、きょとんとした。

「何でわらわが、真砂先生を恨むの。皆、真砂先生のこと好きなのにさ」

 ほれほれ、と畳んでいた応援旗の布を振る。
 ふと真砂が、深成をまじまじと見た。

「そういやお前、怪我しなかったのか。思いっきり突き飛ばされただろう」

「あ、うん。擦り剥いたけど、大丈夫」

 あまりの弁当の強烈さに気付かなかったが、そういえば深成は腕も足も傷だらけだ。
 体操服も泥だらけ。

「わらわよりもさ、六郎先生は? 先生、いきなり倒れたじゃん?」

 きょろ、と職員室の中を見渡しても、六郎の姿はない。
 が、真砂はふんと鼻を鳴らした。

「ただの鼻血だ。あれぐらいで鼻血噴くなんざ、歳のわりに青い奴だな」

「あれぐらい?」

 どうやら深成には、千代のお色気作戦は、何をやっているのかすら理解できなかったらしい。

 そこにようやく、六郎が帰ってきた。
 まだ貧血気味らしく、青い顔でふらふらと自分の席につく。

「六郎先生っ。大丈夫だったの?」

 深成が机に手をついて、身を乗り出す。
 それに、六郎は力なく笑った。

「ああ。みっともないとこ見せちゃったね」

「全くだ」

 深成ではなく真砂が、ばっさりと斬る。
 そして深成お手製爆弾おにぎりを、ぱくりと口に入れた。

「美味しいっ? ね、中身何だった?」

 一瞬で六郎のことなど頭から吹っ飛んだように、深成は真砂のほうへと向き直った。
 きらきらした目で、真砂を覗き込む。

 おにぎりは爆弾らしく、一口大だ。
 中身を見ていないので、味で判断するしかないのだが。

「……何だろうな」

 口を動かしながら、真砂が首を傾げる。

「何でわかんないのさ〜」

「作ったくせに、覚えてない奴が言うな。大体作ったんなら、おおよその見当ぐらいつくだろう」

 言いつつ、もう一つも口に入れる。
 やっぱりわからない。