そしてそんな波乱万丈なリレーを終えて。

「じゃじゃ〜ん! お待ちかねの、お弁当だよ〜っ」

 職員室に、深成が満面の笑みで駆け込んできた。
 その手には、大きな重箱が抱えられている。

「ささ、机の上片付けてっ」

 いそいそと真砂の机の上のものを横に避け、深成が重箱を置く。

「お前な、人数を考えてるか?」

「だって先生、男の人じゃん。わらわも食べるし、いっぱいいるでしょ?」

「それにしたって……」

 重箱は三段だ。
 二人としても多いだろうに。

 だがこれを一人で作ってきたのだとしたら大したものだ。
 ちょっと感心した真砂だったが、深成が重箱の蓋を取った途端、眉間に皺が寄る。

「……何だ、これは」

「タコさんウインナーだよっ」

「そうだろうな」

 重箱一段にぎっちり詰め込まれたウインナーの山。

「タコウインナーばっかり食えるかっ。お前、これしか作れんのか」

「そんなことないよっ! ほらっ! カニさんもいるんだからっ!」

「素材は同じだろうがっ! そういう問題じゃない!」

 割り箸を折る勢いで言う真砂に、深成はささっと二段目を開けた。

「もぅ〜、そんなに怒んないでよ。ほら、タコさんカニさんだけじゃないよ。ちゃんと先生の好きな卵も作ってきたんだから」

 にこにこと差し出す二段目には、卵焼き・目玉焼き・ゆで卵。
 真砂は肘をついて、はあぁ、とため息をついた。

「ほらっ、こっちが塩で、こっちは砂糖なんだよ。こっちの卵焼きには、チーズが入ってんの。凄いでしょ?」

「……それで? 最後の段は何なんだ」

 最早話のネタにしかならない内容に、真砂は投げやりに聞いた。

「最後はやっぱり、おにぎりでしょ〜」

 じゃじゃん、と三段目を開ける。
 見た目は普通のおにぎりが、一段丸ごと入っている。

「お前は一段に一品しか入れたら駄目だとか思ってるのか?」

 くるくると箸を弄びながら、真砂が言う。
 いかにも食べる気のなさそうな態度だ。
 深成はそんな真砂の態度も気にせず、いそいそと皿におにぎりを二つ取った。

「だって、いろんなもの入れたら、味が混じっちゃうじゃん」

「世の中にはな、ばらんとかホイルとか、味が移るのを防ぐ役割のものが沢山あるんだ」

「そっか。でもねぇ、わらわもちゃんと、考えて作ってきたんだよ?」

 知らんかったんかい、と突っ込まれそうな返しをし、はい、とおにぎりの乗った皿を差し出す。

「爆弾おにぎり。中にね、おかずがいろいろ入ってんの。楽しいでしょ?」

「……っ」

 爆弾おにぎりというのは、ろくなものが入っていないイメージだ。
 だからこそ『爆弾』なのだ。
 顔を引き攣らせ、真砂は差し出されたおにぎりを、まじまじと見つめた。