「症状は?」
「あ、何かずっと吐いてて。お腹が痛いようです」
捨吉が答える間に、真砂は聴診器を用意する。
そして、じ、と深成を見た。
「おい、腹出せ」
優しさもへったくれもない。
深成はもぞもぞと服を掴んで、はっとした。
着ているのは、すとんとしたカットソーワンピである。
お腹だけを出すことは出来ない。
どうしよう、と焦っていると、真砂の目が若干鋭くなった。
「何をしている」
「だ、だって。ワンピースだもん」
「だから何だ。下からめくればいいだろう」
何でもないことのように言い、事実何でもないことのように、真砂は深成のワンピースの裾を掴むと、一気に胸元までめくり上げた。
「んにゃーっ! 助平~~~っ!!」
「阿呆! 何を言ってるんだ! ガキの裸なんか見たって面白くもないわ!」
罵声を浴びせる真砂の後ろから、あきがカルテを口元に当てて見ている。
目は驚いたように見開かれているが、何故か目尻は下がっている。
顔も真っ赤で、何やら考えているようだ。
---まぁ先生っ。こここ、こんな病院の一室で、こんな風に診察台に押し倒されたらどうしましょうっ。あんなに乱暴に服を剥ぎ取られて……きゃーっ!!---
最後にはカルテで完全に顔を覆って後ろを向く。
鼻血でも出たのかもしれない。
言っておくが、別に真砂は深成を押し倒したわけでもないし、服を剥ぎ取ったわけでもない。
とりあえず、最も常識的であろう捨吉は、妹のために、そっとその場を離れた。
ぎゃーすか騒ぐ深成を押さえつけ、真砂は手早く聴診器を当てていく。
そしてようやく手を離し、あきの手からカルテを取ると、何やら書き付けた。
「口を開けろ」
ペンを置き、真砂が再び深成に向き直った。
ペンライトを構える。
診察台に寝転んだままの深成が、ぱか、と口を開けると、真砂はずいっと身を乗り出す。
真砂の背後では、何故かあきも、少し身を乗り出していた。
---あああ、あんなに至近距離に近づいて。あんな風に迫られたら、もうもうっ! あのまま目を閉じたら、キスされそう---
赤い顔で、うっとりと深成の喉を覗き込む真砂を見る。
別に真砂は迫っているわけではないし、ましてキスしようとしているわけでもない。
「喉は痛くないか?」
身を起こし、真砂が聞く。
深成はこくりと頷いた。
「えへん虫はいないけど、とにかく気持ち悪い」
うえええ、と顔をしかめる深成から、真砂はさりげなく距離を取った。
そして聴診器を取りながら、あきに何やら命じる。
「胃腸風邪だな。今は何を食っても、全部出るだろう」
「うん。だからお茶飲むのも怖い」
「だからといって何も飲まないと、脱水症状になる。点滴するぞ」
「えええっ!!」
がば、と深成が飛び起きた。
「大丈夫っ! もう治った!!」
叫び様、診察台から飛び降りて逃げようとする。
だが簡単に真砂に捕まった。
「治るわけあるか。ほれ、熱だってまだ高い」
片腕で軽々と深成を抱え上げて診察台に戻し、ひょい、と自分の額を深成の額にくっつけた。
「うん、熱い」
「ちょっとお。わらわ、子供じゃないんだからね! もぅ、先生はいっつもわらわのこと子供扱いするんだから!」
明らかに子供にするように、額で熱を測る真砂に、深成はぶーぶー文句を言う。
「何を粋がってるんだか。お前なんぞ、本来は小児科に行くべきだぞ」
「あ、何かずっと吐いてて。お腹が痛いようです」
捨吉が答える間に、真砂は聴診器を用意する。
そして、じ、と深成を見た。
「おい、腹出せ」
優しさもへったくれもない。
深成はもぞもぞと服を掴んで、はっとした。
着ているのは、すとんとしたカットソーワンピである。
お腹だけを出すことは出来ない。
どうしよう、と焦っていると、真砂の目が若干鋭くなった。
「何をしている」
「だ、だって。ワンピースだもん」
「だから何だ。下からめくればいいだろう」
何でもないことのように言い、事実何でもないことのように、真砂は深成のワンピースの裾を掴むと、一気に胸元までめくり上げた。
「んにゃーっ! 助平~~~っ!!」
「阿呆! 何を言ってるんだ! ガキの裸なんか見たって面白くもないわ!」
罵声を浴びせる真砂の後ろから、あきがカルテを口元に当てて見ている。
目は驚いたように見開かれているが、何故か目尻は下がっている。
顔も真っ赤で、何やら考えているようだ。
---まぁ先生っ。こここ、こんな病院の一室で、こんな風に診察台に押し倒されたらどうしましょうっ。あんなに乱暴に服を剥ぎ取られて……きゃーっ!!---
最後にはカルテで完全に顔を覆って後ろを向く。
鼻血でも出たのかもしれない。
言っておくが、別に真砂は深成を押し倒したわけでもないし、服を剥ぎ取ったわけでもない。
とりあえず、最も常識的であろう捨吉は、妹のために、そっとその場を離れた。
ぎゃーすか騒ぐ深成を押さえつけ、真砂は手早く聴診器を当てていく。
そしてようやく手を離し、あきの手からカルテを取ると、何やら書き付けた。
「口を開けろ」
ペンを置き、真砂が再び深成に向き直った。
ペンライトを構える。
診察台に寝転んだままの深成が、ぱか、と口を開けると、真砂はずいっと身を乗り出す。
真砂の背後では、何故かあきも、少し身を乗り出していた。
---あああ、あんなに至近距離に近づいて。あんな風に迫られたら、もうもうっ! あのまま目を閉じたら、キスされそう---
赤い顔で、うっとりと深成の喉を覗き込む真砂を見る。
別に真砂は迫っているわけではないし、ましてキスしようとしているわけでもない。
「喉は痛くないか?」
身を起こし、真砂が聞く。
深成はこくりと頷いた。
「えへん虫はいないけど、とにかく気持ち悪い」
うえええ、と顔をしかめる深成から、真砂はさりげなく距離を取った。
そして聴診器を取りながら、あきに何やら命じる。
「胃腸風邪だな。今は何を食っても、全部出るだろう」
「うん。だからお茶飲むのも怖い」
「だからといって何も飲まないと、脱水症状になる。点滴するぞ」
「えええっ!!」
がば、と深成が飛び起きた。
「大丈夫っ! もう治った!!」
叫び様、診察台から飛び降りて逃げようとする。
だが簡単に真砂に捕まった。
「治るわけあるか。ほれ、熱だってまだ高い」
片腕で軽々と深成を抱え上げて診察台に戻し、ひょい、と自分の額を深成の額にくっつけた。
「うん、熱い」
「ちょっとお。わらわ、子供じゃないんだからね! もぅ、先生はいっつもわらわのこと子供扱いするんだから!」
明らかに子供にするように、額で熱を測る真砂に、深成はぶーぶー文句を言う。
「何を粋がってるんだか。お前なんぞ、本来は小児科に行くべきだぞ」