「あき~ぃ」
ブースでお昼ご飯を食べていた深成とあきの元に、二課のほうからゆいが走り込んできた。
「ねね、今日入ってきた子、見た?」
鼻息荒く深成の横にぎゅむむっと座ってくる。
押し潰されないうちに、深成は奥へと逃げた。
「ああ……。何か話は聞いたけど」
あきが言うと、ゆいはさらに、ずいっと身を乗り出した。
「超可愛いの! ちょっといないほどのイケメンよ~?」
身悶えせんばかりに熱く語る。
そうだったっけ、と深成は首を傾げた。
確かに目は凄く綺麗だった。
が、その目の美しさに呑まれて、顔全体を見ていない。
---ま、どんなイケメンだって、真砂には敵わないけどね---
真砂だって他にないほどのイケメンだ。
そう思い、ちらりとブースから一課の上座を見る。
丁度会議から帰って来た真砂が、PCを置いてそのまま再び歩いてくる。
二課のほうから来た清五郎と落ちあい、外に昼を食べに行くようだ。
深成としては真砂の分もお弁当を作りたいところだが、今まで弁当など持ってきたことのない真砂がいきなりそんなもの持ってきたら、周りがうるさそうだ。
料理はするが、弁当を作るイメージなどない。
彼女と住んでいる、と周りに宣言しているも同然なわけだ。
そしてそうなると、自ずと深成の立場が微妙になる。
付き合っているだけならともかく、すぐ傍にいる上司と同棲しているというのはちょっと、気持ち的に周りの目が気になるものなのだ。
「あ」
真砂と清五郎がブースの横を通った時、深成が声を上げた。
二人の後ろから、あの彼も歩いてきたのだ。
初日なので、清五郎が誘ったのだろう。
「あの子っ。ね、可愛いでしょ?」
ゆいが、ばんばんと深成の背を叩いて、興奮気味に言う。
怪力のゆいが興奮状態で叩くと、結構な力だ。
げほげほとむせながら、深成はゆいから逃げた。
「ちょっとゆいちゃん、声大きい」
あきが慌ててゆいを制す。
彼がちらりとこちらを向いた。
ゆいが騒いだのが聞こえたのだろうが、その表情に変化はない。
そしてそのまま、真砂たちと共にフロアを出て行った。
「見た?」
ずいっと、ゆいがまたも身を乗り出す。
「見たけど……。よくわかんないわ。前髪長すぎない?」
あきが首を傾げて言う。
するとゆいは、ちちち、と指を振った。
「おでこに傷があるんだって」
「え?」
「それを隠すためらしいわ」
「へー、そうなんだ」
「ちらっと見えた首にも、ちょっと傷が見えたわ」
己の首を指して言うゆいに、さりげなく深成も自分の喉元に手をやった。
朝に彼に指摘されたところに、確かにキスマークがあった。
こっそり手鏡で確かめた深成は、シャツのボタンを上まで留めて隠したのだ。
ちゃんと隠したつもりだが、気になってしまう。
---清五郎課長、気付いたかなぁ。課長だけだったら大丈夫だろうけど、あの子、妙なこと言いませんように---
ひっそりと思っていると、あきが、じーっと見ている。
深成と目が合うと、意味ありげににこりと笑った。
「ま、うちはイケメンには慣れてるからね~」
言いつつ、ね、と深成に話を振る。
真砂のことを言っているのだろう。
どういう意味だろう、と思いつつも、深成もへら、と笑い返した。
ブースでお昼ご飯を食べていた深成とあきの元に、二課のほうからゆいが走り込んできた。
「ねね、今日入ってきた子、見た?」
鼻息荒く深成の横にぎゅむむっと座ってくる。
押し潰されないうちに、深成は奥へと逃げた。
「ああ……。何か話は聞いたけど」
あきが言うと、ゆいはさらに、ずいっと身を乗り出した。
「超可愛いの! ちょっといないほどのイケメンよ~?」
身悶えせんばかりに熱く語る。
そうだったっけ、と深成は首を傾げた。
確かに目は凄く綺麗だった。
が、その目の美しさに呑まれて、顔全体を見ていない。
---ま、どんなイケメンだって、真砂には敵わないけどね---
真砂だって他にないほどのイケメンだ。
そう思い、ちらりとブースから一課の上座を見る。
丁度会議から帰って来た真砂が、PCを置いてそのまま再び歩いてくる。
二課のほうから来た清五郎と落ちあい、外に昼を食べに行くようだ。
深成としては真砂の分もお弁当を作りたいところだが、今まで弁当など持ってきたことのない真砂がいきなりそんなもの持ってきたら、周りがうるさそうだ。
料理はするが、弁当を作るイメージなどない。
彼女と住んでいる、と周りに宣言しているも同然なわけだ。
そしてそうなると、自ずと深成の立場が微妙になる。
付き合っているだけならともかく、すぐ傍にいる上司と同棲しているというのはちょっと、気持ち的に周りの目が気になるものなのだ。
「あ」
真砂と清五郎がブースの横を通った時、深成が声を上げた。
二人の後ろから、あの彼も歩いてきたのだ。
初日なので、清五郎が誘ったのだろう。
「あの子っ。ね、可愛いでしょ?」
ゆいが、ばんばんと深成の背を叩いて、興奮気味に言う。
怪力のゆいが興奮状態で叩くと、結構な力だ。
げほげほとむせながら、深成はゆいから逃げた。
「ちょっとゆいちゃん、声大きい」
あきが慌ててゆいを制す。
彼がちらりとこちらを向いた。
ゆいが騒いだのが聞こえたのだろうが、その表情に変化はない。
そしてそのまま、真砂たちと共にフロアを出て行った。
「見た?」
ずいっと、ゆいがまたも身を乗り出す。
「見たけど……。よくわかんないわ。前髪長すぎない?」
あきが首を傾げて言う。
するとゆいは、ちちち、と指を振った。
「おでこに傷があるんだって」
「え?」
「それを隠すためらしいわ」
「へー、そうなんだ」
「ちらっと見えた首にも、ちょっと傷が見えたわ」
己の首を指して言うゆいに、さりげなく深成も自分の喉元に手をやった。
朝に彼に指摘されたところに、確かにキスマークがあった。
こっそり手鏡で確かめた深成は、シャツのボタンを上まで留めて隠したのだ。
ちゃんと隠したつもりだが、気になってしまう。
---清五郎課長、気付いたかなぁ。課長だけだったら大丈夫だろうけど、あの子、妙なこと言いませんように---
ひっそりと思っていると、あきが、じーっと見ている。
深成と目が合うと、意味ありげににこりと笑った。
「ま、うちはイケメンには慣れてるからね~」
言いつつ、ね、と深成に話を振る。
真砂のことを言っているのだろう。
どういう意味だろう、と思いつつも、深成もへら、と笑い返した。