【キャスト】
mira商社 課長:真砂 派遣事務員:深成 カフェバー店長:片桐
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
それはいつものランチミーティング後。
真砂だけがミラ子社長に引き留められた。
そこで何やら散々なやり取りがなされ、何だかへろへろになった真砂が社長室から営業フロアに帰ってきたのは夕方だった。
「課長、お帰りなさい。これがチェック待ちで、電話がこことここからで……」
真砂が席につくなり、深成が資料を持ってきて説明する。
珍しく、真砂はその説明を聞きながら、傍のメモ用紙にペンを走らせた。
いつもメモなんか取らなくても全部覚えるのに、どうしたんだろう、と思っていると、真砂が、ちら、と視線を上げた。
深成が気付いて視線を落とすと、そのメモ用紙に『今日は遅くなるから、先寝とけ』と走り書きで書いてある。
別に説明に関するメモを取っていたわけではないらしい。
こくりと深成が小さく頷くと、真砂は、さっさとそのメモを捨てた。
---何かあったのかな。真砂だけ帰ってくるの遅かったし---
席に戻ってからも、深成は少し気になって、上座の真砂をちらちら窺った。
機嫌はよろしくないようだ。
だが誰かが何かミスをして社長の叱責を受けた、という感じではなく、ひたすら何か気が進まない、といった感じだ。
---何か、社長の付き合いに駆り出されるのかな---
妙に疲れて帰ってきたし、また社長に無理難題を吹っ掛けられたのかもしれない。
---でも真砂はどんなことだって、きちんとこなせる人だもんね---
そう思うと頬が緩む。
仕事は全て完璧にこなす。
部下はもちろん、社長の信頼も厚い自慢の彼氏だ。
「深成ちゃん、何にまにましてるの」
不意に横からあきが、目尻を下げて深成に声をかけた。
おっと、と顔を引き締め、深成はモニターに向き直る。
そして、気付いたように、あきの前の席に目をやった。
「今日はあんちゃん、出張だったよね」
「そうね。明日のお昼には戻ってくるけど」
「じゃああきちゃん、今日の夜、ご飯食べに行かない?」
あきの彼氏である捨吉がいないのであれば、夜に用事があるということはあるまい。
深成が誘うと、あきもあっさり頷いた。
「いいよ。じゃあ、あそこ行こうよ。この前行ったカフェバー」
「あ、うん。あそこ美味しかったよね」
何となく漂う不穏な空気にも気付かず、深成は定時少し過ぎに、あきと共に会社を出た。
「いらっしゃ~い」
小洒落たドアを開けると、カウンターの中から声がかかった。
この小さなカフェバーは、この前偶然あきと見つけた隠れ家的な店だ。
「あらお二人さん、今日は女の子だけなの?」
カウンターから出てきて席に案内するのは、目を見張るほどのイケメンだ。
だが。
「あきちゃんも、また彼氏連れてらっしゃいよ。あの子、若くて反応がいちいち面白いのよ~」
「やめてくださいよ、片桐さん。捨吉くん、すっごく引いてたんですから」
「何で引くのかしらねぇ? そんなに引くから、こっちはどんどん押しちゃうんじゃない」
面白そうに言うこのイケメンは、この店の店長で片桐という。
モデルのようないい男なのに、言葉遣いが完全にオネェだ。
どこまで本気のオネェなのかは謎だが、面白いのであきも深成もすぐに打ち解けた。
「あきちゃん、あんちゃんと来たんだ?」
「うん。だってここ、お気に入りだし」
「嬉しいわね~」
ころころと片桐が笑う。
違和感がないのがまた凄い。
「お子ちゃま子兎ちゃんも、彼氏ができたら連れてらっしゃい。あたしがきっちり査定してあげるから」
ぐりぐりと頭を撫でて言う片桐に、深成は、少し自慢げに胸を張った。
「わらわにも、ちゃんと彼氏いるもん」
「あらっ意外。ちゃんとした人? 騙されてない?」
心底驚いたような片桐に、あきが、あはは、と笑い声を上げた。
「その点は大丈夫ですよ。うちの課長ですから」
「営業部のエースなの。社長からも凄く好かれてるし、すっごく男前なんだよ!」
えへん、と鼻息荒く深成が言うと、片桐は一層怪訝な顔になった。
まじまじと深成を見る。
mira商社 課長:真砂 派遣事務員:深成 カフェバー店長:片桐
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
それはいつものランチミーティング後。
真砂だけがミラ子社長に引き留められた。
そこで何やら散々なやり取りがなされ、何だかへろへろになった真砂が社長室から営業フロアに帰ってきたのは夕方だった。
「課長、お帰りなさい。これがチェック待ちで、電話がこことここからで……」
真砂が席につくなり、深成が資料を持ってきて説明する。
珍しく、真砂はその説明を聞きながら、傍のメモ用紙にペンを走らせた。
いつもメモなんか取らなくても全部覚えるのに、どうしたんだろう、と思っていると、真砂が、ちら、と視線を上げた。
深成が気付いて視線を落とすと、そのメモ用紙に『今日は遅くなるから、先寝とけ』と走り書きで書いてある。
別に説明に関するメモを取っていたわけではないらしい。
こくりと深成が小さく頷くと、真砂は、さっさとそのメモを捨てた。
---何かあったのかな。真砂だけ帰ってくるの遅かったし---
席に戻ってからも、深成は少し気になって、上座の真砂をちらちら窺った。
機嫌はよろしくないようだ。
だが誰かが何かミスをして社長の叱責を受けた、という感じではなく、ひたすら何か気が進まない、といった感じだ。
---何か、社長の付き合いに駆り出されるのかな---
妙に疲れて帰ってきたし、また社長に無理難題を吹っ掛けられたのかもしれない。
---でも真砂はどんなことだって、きちんとこなせる人だもんね---
そう思うと頬が緩む。
仕事は全て完璧にこなす。
部下はもちろん、社長の信頼も厚い自慢の彼氏だ。
「深成ちゃん、何にまにましてるの」
不意に横からあきが、目尻を下げて深成に声をかけた。
おっと、と顔を引き締め、深成はモニターに向き直る。
そして、気付いたように、あきの前の席に目をやった。
「今日はあんちゃん、出張だったよね」
「そうね。明日のお昼には戻ってくるけど」
「じゃああきちゃん、今日の夜、ご飯食べに行かない?」
あきの彼氏である捨吉がいないのであれば、夜に用事があるということはあるまい。
深成が誘うと、あきもあっさり頷いた。
「いいよ。じゃあ、あそこ行こうよ。この前行ったカフェバー」
「あ、うん。あそこ美味しかったよね」
何となく漂う不穏な空気にも気付かず、深成は定時少し過ぎに、あきと共に会社を出た。
「いらっしゃ~い」
小洒落たドアを開けると、カウンターの中から声がかかった。
この小さなカフェバーは、この前偶然あきと見つけた隠れ家的な店だ。
「あらお二人さん、今日は女の子だけなの?」
カウンターから出てきて席に案内するのは、目を見張るほどのイケメンだ。
だが。
「あきちゃんも、また彼氏連れてらっしゃいよ。あの子、若くて反応がいちいち面白いのよ~」
「やめてくださいよ、片桐さん。捨吉くん、すっごく引いてたんですから」
「何で引くのかしらねぇ? そんなに引くから、こっちはどんどん押しちゃうんじゃない」
面白そうに言うこのイケメンは、この店の店長で片桐という。
モデルのようないい男なのに、言葉遣いが完全にオネェだ。
どこまで本気のオネェなのかは謎だが、面白いのであきも深成もすぐに打ち解けた。
「あきちゃん、あんちゃんと来たんだ?」
「うん。だってここ、お気に入りだし」
「嬉しいわね~」
ころころと片桐が笑う。
違和感がないのがまた凄い。
「お子ちゃま子兎ちゃんも、彼氏ができたら連れてらっしゃい。あたしがきっちり査定してあげるから」
ぐりぐりと頭を撫でて言う片桐に、深成は、少し自慢げに胸を張った。
「わらわにも、ちゃんと彼氏いるもん」
「あらっ意外。ちゃんとした人? 騙されてない?」
心底驚いたような片桐に、あきが、あはは、と笑い声を上げた。
「その点は大丈夫ですよ。うちの課長ですから」
「営業部のエースなの。社長からも凄く好かれてるし、すっごく男前なんだよ!」
えへん、と鼻息荒く深成が言うと、片桐は一層怪訝な顔になった。
まじまじと深成を見る。