「遅いよぅ。やけにゆっくりだったね」
真砂が男湯から出ると、前の談話スペースにいた深成が、ててて、と駆け寄ってくる。
「夜中に一人は怖かったよぅ」
誰もいないのをいいことに、深成は思いっきり真砂に甘える。
「そんなに遅かったか?」
紙コップに備え付けの水を汲んでいると、からから、と力なく男湯の引き戸が開いた。
お、と真砂は、深成がそれに気付く前に引き寄せた。
「お前、水飲んだか?」
「ん? ううん」
深成が紙コップを取ろうとすると、いきなり真砂が深成の肩に手を回し、押さえつけるようにキスをした。
「んっ……」
しばらく経ってから、ごくりと深成の喉が鳴った。
ようやく唇が離れる。
「んっもぅ真砂、口移しで飲ませるなら、一言言ってよ。びっくりするじゃん」
けほん、と少し噎せながら、深成が言う。
そのとき、がたた、と音がした。
ちょうど出て来た六郎が、真砂が深成にキスした(しかも水を口移しで飲ませたので長い)のを見たのだ。
風呂場で出血多量だったところに、またも衝撃を受け、よろめいたらしい。
「ん? 誰かいたの?」
深成が、ひょい、と男湯のほうに目をやる。
が、それを阻むように、真砂がぎゅ~っと深成を抱き締めた。
「ちょ、ちょっと真砂。誰かいるなら、ここではちょっと……」
「大丈夫だよ。誰もいない」
少し暴れた深成だが、真砂に言われ、大人しくなる。
「真砂、ぽかぽかであったかい」
きゅ、と真砂に抱きつき、深成がにこりと笑う。
それを男湯の戸の陰から見た六郎は、うおっと仰け反った。
---くおっ! 可愛い! 抱き付かれてあんな可愛い笑みを向けられたらっ……!---
あれだけ絞り出した鼻の奥が、再び熱くなる。
慌てて鼻を押さえて上を向きながら、六郎はふらふらな身体を戸に預けていた。
「俺はちょっと暑いなぁ。やっぱり長風呂し過ぎたかな」
「じゃあ、ちょっと冷ましてあげよっか?」
深成が言い、手を伸ばして水を汲んだ。
そして、それをごくりと飲む。
---えっ……---
戸から出るに出られない(状況的にも体力的にも)六郎の前で、深成が真砂の浴衣の合わせを少し開き、顔を突っ込む。
ちゅ、という僅かな音が、何度か聞こえた。
「ちょっとだけ、冷たいでしょ」
真砂の胸に唇を付けながら、深成が上目遣いで言う。
やっていることが非常にエロい。
それをあの深成がやるギャップに、六郎の中で、ぶち、と音がした。
「ぐはあぁぁっ!!」
押さえていた手を浮かせる勢いで、鼻から赤い噴水が上がった。
「えっ! な、何っ」
驚いた深成が真砂に飛びつく。
「さぁ? 間欠泉から湯が噴き出したんじゃないか?」
何時間か前の部屋風呂での出来事の再現か。
真砂は涼しい顔で、深成の肩を抱いたまま、階段のほうへと促した。
「男湯は間欠泉があるの? へー、凄いね」
間欠泉など風呂の中にあったら危険でしょうがないのだが。
無邪気に言う深成のうなじに、真砂は唇を押し付けた。
「ひゃんっ」
「まだ暑い。部屋で全身冷ましてくれよ」
「もー、しょうがないなぁ。でも真砂が明日調子悪かったら困るから、わらわ、頑張って冷ましてあげる」
少し恥ずかしそうな深成の声に、戸の向こうでぶっ倒れていた六郎の目が、かっと開いた。
がばっと立ち上がり、半開きだった男湯の戸を、勢いよく開け放つ。
真砂が男湯から出ると、前の談話スペースにいた深成が、ててて、と駆け寄ってくる。
「夜中に一人は怖かったよぅ」
誰もいないのをいいことに、深成は思いっきり真砂に甘える。
「そんなに遅かったか?」
紙コップに備え付けの水を汲んでいると、からから、と力なく男湯の引き戸が開いた。
お、と真砂は、深成がそれに気付く前に引き寄せた。
「お前、水飲んだか?」
「ん? ううん」
深成が紙コップを取ろうとすると、いきなり真砂が深成の肩に手を回し、押さえつけるようにキスをした。
「んっ……」
しばらく経ってから、ごくりと深成の喉が鳴った。
ようやく唇が離れる。
「んっもぅ真砂、口移しで飲ませるなら、一言言ってよ。びっくりするじゃん」
けほん、と少し噎せながら、深成が言う。
そのとき、がたた、と音がした。
ちょうど出て来た六郎が、真砂が深成にキスした(しかも水を口移しで飲ませたので長い)のを見たのだ。
風呂場で出血多量だったところに、またも衝撃を受け、よろめいたらしい。
「ん? 誰かいたの?」
深成が、ひょい、と男湯のほうに目をやる。
が、それを阻むように、真砂がぎゅ~っと深成を抱き締めた。
「ちょ、ちょっと真砂。誰かいるなら、ここではちょっと……」
「大丈夫だよ。誰もいない」
少し暴れた深成だが、真砂に言われ、大人しくなる。
「真砂、ぽかぽかであったかい」
きゅ、と真砂に抱きつき、深成がにこりと笑う。
それを男湯の戸の陰から見た六郎は、うおっと仰け反った。
---くおっ! 可愛い! 抱き付かれてあんな可愛い笑みを向けられたらっ……!---
あれだけ絞り出した鼻の奥が、再び熱くなる。
慌てて鼻を押さえて上を向きながら、六郎はふらふらな身体を戸に預けていた。
「俺はちょっと暑いなぁ。やっぱり長風呂し過ぎたかな」
「じゃあ、ちょっと冷ましてあげよっか?」
深成が言い、手を伸ばして水を汲んだ。
そして、それをごくりと飲む。
---えっ……---
戸から出るに出られない(状況的にも体力的にも)六郎の前で、深成が真砂の浴衣の合わせを少し開き、顔を突っ込む。
ちゅ、という僅かな音が、何度か聞こえた。
「ちょっとだけ、冷たいでしょ」
真砂の胸に唇を付けながら、深成が上目遣いで言う。
やっていることが非常にエロい。
それをあの深成がやるギャップに、六郎の中で、ぶち、と音がした。
「ぐはあぁぁっ!!」
押さえていた手を浮かせる勢いで、鼻から赤い噴水が上がった。
「えっ! な、何っ」
驚いた深成が真砂に飛びつく。
「さぁ? 間欠泉から湯が噴き出したんじゃないか?」
何時間か前の部屋風呂での出来事の再現か。
真砂は涼しい顔で、深成の肩を抱いたまま、階段のほうへと促した。
「男湯は間欠泉があるの? へー、凄いね」
間欠泉など風呂の中にあったら危険でしょうがないのだが。
無邪気に言う深成のうなじに、真砂は唇を押し付けた。
「ひゃんっ」
「まだ暑い。部屋で全身冷ましてくれよ」
「もー、しょうがないなぁ。でも真砂が明日調子悪かったら困るから、わらわ、頑張って冷ましてあげる」
少し恥ずかしそうな深成の声に、戸の向こうでぶっ倒れていた六郎の目が、かっと開いた。
がばっと立ち上がり、半開きだった男湯の戸を、勢いよく開け放つ。