「い、いやっ。彼女とは、そういうんじゃないよ。安心して」
「何でわらわが安心?」
思い切り首を傾げる深成に、六郎は一歩前に出た。
が、六郎が前に出た分、真砂が深成を引っ張って後ろに下げる。
そして、自分が少し前に出た。
「お前、まだつきまとう気か? はっきり振られたくせに、しつこい奴だな」
ふん、と馬鹿にしたように言う。
き、と真砂を睨み、六郎は拳を握りしめた。
「相手があなたでなければ、私だって引き下がる。私は深成ちゃんが不幸になるようなことは、したくないんだ」
「だったら引っ込んでやがれ。お前がしゃしゃり出てきたほうが、こいつにとって不幸だ」
「あなたが深成ちゃんを、幸せに出来るとは思えない!」
噛みつくように言う。
ぶち、と真砂の中で音がした。
「お前に何がわかる!!」
本気で怒鳴られ、さすがに六郎が怯む。
深成もビビり、きゅ、と後ろから真砂の袖を掴んだ。
「六郎さん。何でそんなにわらわを心配するのかわかんないけど、課長は優しいよ。ちゃんと大事にしてくれてるし、わらわも課長のことが大好きなんだから」
「この男が常に深成ちゃんを最優先に行動するとは思えない」
びし、と真砂に指を突き付けて言うが、そんな六郎に、深成はちょっと訝しげな顔をした。
「そんないっつもいっつもわらわの意見ばっかり聞くような人、嫌だよ」
思わぬ深成の意見に、六郎が固まった。
「そんな人より、自分の意見をしっかり持ってて、ぐいぐいわらわを引っ張ってくれる人のほうが好き。課長はその上で、ちゃんとわらわのことも考えてくれるもん。だからわらわ、安心して甘えられるの」
まさに理想、と言い、えへへ、と笑う。
まさかこの深成から、こんな具体的な恋愛観が出るとは。
「そ、それは……深成ちゃんの思い込みってやつじゃなくて?」
最早六郎のHPは限りなくゼロに近い。
最後の望みの無駄な抵抗を試みてみるが。
「もー。しょうがない、じゃあ証拠」
ぷーっと膨れながら、深成が右手を開いて六郎に突き出した。
その小指には、綺麗な指輪が嵌っている。
「これ、課長が買ってくれたんだよ。課長は薬指用の指輪でも良かったみたいだけど、ほら、そうすると会社で目立つでしょ。わらわが困るだろうからって、ピンキーリングにしてくれたの」
強張った顔の六郎の目を射るように、深成の小指の指輪がきらきらと輝く。
「けど相変わらずこんな奴がまとわりつくなら、やっぱりさっさとこっちに指輪を作るかな」
言いつつ、真砂が深成の左手を取る。
「ん、う~ん。でもそれは、区役所とセットでしょ?」
「もちろん」
「そ、そうだなぁ~。そしたら真砂にも虫はつかないかもだし」
「俺にそんなもん、つくわけないだろ。他の女なんていらねぇよ」
「わらわだって、真砂以外いらないも~ん。ていうか真砂。あんまり本気で怒鳴ったら怖いよぅ」
「あ? ああ、悪い。でもしょうがないだろ。お前に関することなんだし」
何だかすっかりらぶらぶモードだ。
前ですっかり石になっている六郎のことなど眼中にない。
六郎のHPはゼロを下回ってマイナスである。
「お、真砂ー。何やってるんだ。そろそろ消灯だぜ」
妙な空気漂う廊下に、爽やかな声が響いた。
見ると、ずっと先のほうから清五郎が呼んでいる。
「あ、は~い。……て、あれ、あきちゃん? どこ行ったの?」
風呂から一緒に出て来たはずだが、そういえば途中からあきの姿がない。
だからこそ真砂とらぶらぶ出来たわけだが、すっかり存在を忘れていた。
「あきちゃんなら、俺と一緒に部屋に戻る途中でトイレに寄るって別れたぜ」
「そうなんだ」
清五郎に言われ、後方にあるトイレのほうを見ると、顔半分出したあきと目が合った。
「どうしたの、あきちゃん」
「ちょ、ちょっとのぼせちゃったみたいで、鼻血が出てさ。トイレから出るに出られなくて」
へら、と笑い、あきは鼻を押さえていたティッシュを取った。
---ああ、ようやくおさまってきた。いやぁ、久々に鼻血噴いちゃった。そりゃあんならぶらぶっぷりを見せられたら血圧も上がるわよ~。しかしやっぱり、あの指輪は課長からだったのね。まぁわかってたけど、そんなことまであの課長が考えて買ってくれたんだぁ~~---
どうやらトイレから、ずっと先のやり取りを聞いていたらしい。
普通は聞こえないような距離であっても、あきには聞こえるのだ(怖)。
「もう大丈夫。後は寝るだけだしね」
「そだね」
あきと一緒に、深成が部屋に駆けて行く。
その場に根の生えてしまった六郎に、ちら、と目をやり、ふふん、と思いっきり馬鹿にした笑みを残すと、真砂もとっとと部屋に戻るのであった。
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
あれあれ、一日で十分だったな。
つか次の日六郎は大丈夫なのでしょうか。
二日目は帰るだけなのを祈る( ̄▽ ̄)
う~ん、やっぱり人数が多いと、なかなからぶらぶっぷりを発揮できませんなぁ。
もっともっといちゃいちゃさせたかったんですが。
それにしても六郎、落ちるとこまで落とされてますが。
新たな恋も始まるか? いやどうかな。
ゆいと深成じゃ全然タイプが違うし。
六郎は深成一筋ですのでねぇ。
でもゆいのお蔭で僅かに良い目を見た……のか?
六郎に幸あらんことを( *´艸`)
2016/05/19 藤堂 左近
「何でわらわが安心?」
思い切り首を傾げる深成に、六郎は一歩前に出た。
が、六郎が前に出た分、真砂が深成を引っ張って後ろに下げる。
そして、自分が少し前に出た。
「お前、まだつきまとう気か? はっきり振られたくせに、しつこい奴だな」
ふん、と馬鹿にしたように言う。
き、と真砂を睨み、六郎は拳を握りしめた。
「相手があなたでなければ、私だって引き下がる。私は深成ちゃんが不幸になるようなことは、したくないんだ」
「だったら引っ込んでやがれ。お前がしゃしゃり出てきたほうが、こいつにとって不幸だ」
「あなたが深成ちゃんを、幸せに出来るとは思えない!」
噛みつくように言う。
ぶち、と真砂の中で音がした。
「お前に何がわかる!!」
本気で怒鳴られ、さすがに六郎が怯む。
深成もビビり、きゅ、と後ろから真砂の袖を掴んだ。
「六郎さん。何でそんなにわらわを心配するのかわかんないけど、課長は優しいよ。ちゃんと大事にしてくれてるし、わらわも課長のことが大好きなんだから」
「この男が常に深成ちゃんを最優先に行動するとは思えない」
びし、と真砂に指を突き付けて言うが、そんな六郎に、深成はちょっと訝しげな顔をした。
「そんないっつもいっつもわらわの意見ばっかり聞くような人、嫌だよ」
思わぬ深成の意見に、六郎が固まった。
「そんな人より、自分の意見をしっかり持ってて、ぐいぐいわらわを引っ張ってくれる人のほうが好き。課長はその上で、ちゃんとわらわのことも考えてくれるもん。だからわらわ、安心して甘えられるの」
まさに理想、と言い、えへへ、と笑う。
まさかこの深成から、こんな具体的な恋愛観が出るとは。
「そ、それは……深成ちゃんの思い込みってやつじゃなくて?」
最早六郎のHPは限りなくゼロに近い。
最後の望みの無駄な抵抗を試みてみるが。
「もー。しょうがない、じゃあ証拠」
ぷーっと膨れながら、深成が右手を開いて六郎に突き出した。
その小指には、綺麗な指輪が嵌っている。
「これ、課長が買ってくれたんだよ。課長は薬指用の指輪でも良かったみたいだけど、ほら、そうすると会社で目立つでしょ。わらわが困るだろうからって、ピンキーリングにしてくれたの」
強張った顔の六郎の目を射るように、深成の小指の指輪がきらきらと輝く。
「けど相変わらずこんな奴がまとわりつくなら、やっぱりさっさとこっちに指輪を作るかな」
言いつつ、真砂が深成の左手を取る。
「ん、う~ん。でもそれは、区役所とセットでしょ?」
「もちろん」
「そ、そうだなぁ~。そしたら真砂にも虫はつかないかもだし」
「俺にそんなもん、つくわけないだろ。他の女なんていらねぇよ」
「わらわだって、真砂以外いらないも~ん。ていうか真砂。あんまり本気で怒鳴ったら怖いよぅ」
「あ? ああ、悪い。でもしょうがないだろ。お前に関することなんだし」
何だかすっかりらぶらぶモードだ。
前ですっかり石になっている六郎のことなど眼中にない。
六郎のHPはゼロを下回ってマイナスである。
「お、真砂ー。何やってるんだ。そろそろ消灯だぜ」
妙な空気漂う廊下に、爽やかな声が響いた。
見ると、ずっと先のほうから清五郎が呼んでいる。
「あ、は~い。……て、あれ、あきちゃん? どこ行ったの?」
風呂から一緒に出て来たはずだが、そういえば途中からあきの姿がない。
だからこそ真砂とらぶらぶ出来たわけだが、すっかり存在を忘れていた。
「あきちゃんなら、俺と一緒に部屋に戻る途中でトイレに寄るって別れたぜ」
「そうなんだ」
清五郎に言われ、後方にあるトイレのほうを見ると、顔半分出したあきと目が合った。
「どうしたの、あきちゃん」
「ちょ、ちょっとのぼせちゃったみたいで、鼻血が出てさ。トイレから出るに出られなくて」
へら、と笑い、あきは鼻を押さえていたティッシュを取った。
---ああ、ようやくおさまってきた。いやぁ、久々に鼻血噴いちゃった。そりゃあんならぶらぶっぷりを見せられたら血圧も上がるわよ~。しかしやっぱり、あの指輪は課長からだったのね。まぁわかってたけど、そんなことまであの課長が考えて買ってくれたんだぁ~~---
どうやらトイレから、ずっと先のやり取りを聞いていたらしい。
普通は聞こえないような距離であっても、あきには聞こえるのだ(怖)。
「もう大丈夫。後は寝るだけだしね」
「そだね」
あきと一緒に、深成が部屋に駆けて行く。
その場に根の生えてしまった六郎に、ちら、と目をやり、ふふん、と思いっきり馬鹿にした笑みを残すと、真砂もとっとと部屋に戻るのであった。
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
あれあれ、一日で十分だったな。
つか次の日六郎は大丈夫なのでしょうか。
二日目は帰るだけなのを祈る( ̄▽ ̄)
う~ん、やっぱり人数が多いと、なかなからぶらぶっぷりを発揮できませんなぁ。
もっともっといちゃいちゃさせたかったんですが。
それにしても六郎、落ちるとこまで落とされてますが。
新たな恋も始まるか? いやどうかな。
ゆいと深成じゃ全然タイプが違うし。
六郎は深成一筋ですのでねぇ。
でもゆいのお蔭で僅かに良い目を見た……のか?
六郎に幸あらんことを( *´艸`)
2016/05/19 藤堂 左近