【キャスト】
彼氏:真砂 彼女:深成
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「深成ちゃん。ホワイトデー、何か聞いてる?」

 HRが終わってから、あきが不意に深成に聞いた。

「ん? ああ、そういえば。まだ何も聞いてないなぁ」

 荷物をまとめながら、深成は首を傾げた。
 バレンタイン前に一悶着あり、さらに入試の直前だったこともあって、結局バレンタインはケーキをあげるだけに留まった。
 あげるといっても一緒に食べたのだが。
 だが二月の末に入試も終わり、真砂は卒業してしまったが、それからはさらに順調だ。

「ていうか、先輩もわらわも、それどころじゃない~」

 ぎゅっと鞄を抱き締める。
 本日三月十日は真砂の合格発表。
 正午からのはずなので、すでに合否はわかっているはずだ。

「あ、そっか。まだ先輩から連絡はないの?」

 何となく、いの一番に深成に連絡してきそうだが。
 が、深成はふるふるふる、と震える手で、握りしめた携帯をあきに見せた。

「メール入ってるよ」

 受信ランプが光っている。
 が、深成は目をぎゅっと瞑って、ふるふると首を振った。

「多分先輩。だけど……怖くて見れない~~~!!」

 何と。
 折角真砂が早々に連絡してきているのに、まだ見ていないらしい。

「何言ってるのよ! 深成ちゃんからの返信、待ってるに決まってるでしょ。早く返信しなよ!」

「だ、だってぇ。もし駄目だったら? 何て言えばいいのかわかんない~」

「大丈夫だって。早くに連絡してきたんだったら、合格したってことだよ、きっと」

 うう、と相変わらず携帯を握りしめている深成をせっつくが、深成はなかなかメールを開かない。
 と、ざわ、と教室内が騒がしくなった。
 皆の視線が教室の入り口に向く。

 のろのろと顔を向けると、そこには怒り顔の真砂の姿。
 結果を職員に伝えに来たらしい。

「せっ先輩っ!!」

「連絡しただろうが! 何で返さないんだよ」

 人目も憚らず怒鳴る。
 おお、と教室内全員の目が深成に注がれた。

「ごめんなさい~。だって、怖くって、どうしても見れない~~」

 受信ランプのついた携帯を示しながら、深成は真砂に駆け寄る。

「ど、どうだったのっ? 合格した?」

 深成が聞くと、真砂は顎で、ちょい、と携帯を示した。

「見てみろ」

「……」

 不安そうに真砂を見、深成は震える手でメールを開いた。
 出て来たのは一枚の写真。
 合格発表のボードらしい。
 深成は慌てて画像を拡大しつつ、慎重になぞって番号を見ていった。

「ていうかさ、ボードの一部分だけを映してるってことは、そこに俺の番号があるってことだろ」

 いちいち全部探しそうな深成に、ちょっと呆れたように真砂が言う。
 え、と深成は真砂を見、ぱっと笑顔になった。

「うわぁ、凄い! おめでとう!」

「……折角すぐに連絡したのによ。さっさと見ろよな」

 深成の嬉しそうな笑顔に、ちょっと照れたように言い、真砂はちらりと教室内を見た。

「終わったんだろ。帰るぞ」

「あ、うん。あきちゃん、じゃ、明日ね~」

 ひらひらと手を振り、深成は真砂の後を追った。

---凄い。真砂先輩って、結構一直線ね。周りの目なんて気にしない人なんだ。こんなに皆が自分を見てるってのに、自分は深成ちゃんしか見てないし。自分の気持ちもダダ漏れじゃない? にしても深成ちゃんに笑顔を向けられると、あの先輩でもくらっとなるのね! もぅ、二人のときとか、どんな感じになるのかしら~!---

 にまにまと笑いながら、あきは手を振るのであった。