さてお昼過ぎにゲレンデを後にし、宿に戻って少し休んでから、一行は荷物をまとめてロビーに集まった。

「それじゃ、どうもお世話になりました」

 清五郎が、セツに挨拶する。

「ほほ。またいつでもおいでなされ」

 上機嫌で言うセツの少し後ろには、あの兄嫁が小さく控えている。
 何を考えているのか、ちらちらと男性陣を見ては、頬を染めて視線を逸らす。
 が、その目が深成を見た途端、少し不思議そうな顔になり、その横の真砂をちらりと見た。

---あのお義姉さん、深成ちゃんをやたら不思議そうに見るわね。そういえば初めからそうだったわ。ま、アレを渡したってことは、あの人の中ではあたしたち、そういうことをする関係だって思ってるんだろうけど。何といっても深成ちゃんの相手は、真砂課長だものね……。見た目だけだったら、不思議に思うかもね---

 それにしても、と、あきはちらりと隣の捨吉を見た。
 結局この旅行中は、何もなかった。

---あ~あ。あたしから言わないといけないのかしら? 何か、ここまで何もないと、それほどあたしに興味ないのかな、とも思うわよ---

 少しむすっとしていると、深成にくいくいと腕を引っ張られた。

「どうしたの、あきちゃん。ほら、車に行こ?」

 は、と顔を上げると、いつの間にやら皆すでに外に出て、車に荷物を積んでいる。
 慌ててあきも、深成と共に宿を出た。



「晩飯、どっかで食って帰るか」

 それぞれの家が近付いて来た頃には、すでに日は落ちている。
 清五郎が、時計を見て言った。
 宿を出るのが遅かったので、丁度夕飯時だ。

「う~ん……。でもわらわ、今日はめっちゃ眠い」

 すでに目が閉じている深成が、真砂に寄りかかりながら言う。
 さすがに疲れたと見え、千代もあきも眠そうだ。

「早く帰ったほうがいいかな。真っ直ぐ帰るか」

「お前も疲れたろ。まとめて西の端で降ろして貰ってもいいぞ」

 西の端の捨吉のところだけで良ければ、一旦高速は降りなければならないが、すぐまた高速に入ればかなり早いのだ。

「でもその状態の派遣ちゃんは可哀想だろ」

「捨吉のところからなら、車よりも電車のほうが速い。とりあえず、家までは引き摺って行くから大丈夫だ」

 真砂はそう言って、おい、鍵出しておけ、と深成に言う。
 清五郎はバックミラーでちらりと後ろのメンバーを見、う~ん、と唸った。

「まぁ……確かにそっちのほうが早いか。あきちゃんは? 大丈夫か?」

「ええ。あたしも捨吉くんのところから、そう遠くないですし。電車一本ですから全然構いませんよ」

「ま、どうしてもしんどかったら、捨吉、泊めてやれよ」

 さらりと言う。
 その瞬間、捨吉とあきの目が、ぱっちりと開いた。
 覚めてしまったようだ。

「じゃ、派遣ちゃんは真砂に任そう。派遣ちゃんもそっちのほうがいいだろうしな」

 またもさらりと言い、清五郎は高速を降りた。